FIA世界ラリー選手権の日本ラウンド「フォーラムエイト・ラリージャパン」が11月16日から4日間、愛知県などで開催されました。
一般道を舞台にタイムを競う、ラリー選手権。
最終日の19日に、メイン会場である豊田スタジアムの大型ビジョンでライブ映像とともに映し出されたのは、「ろう実況者」の早瀬憲太郎さんです。
手話実況は、情報のバリアをなくし誰もが当たり前にスポーツを楽しめる、バリアフリーなスポーツ観戦に向けた取り組みで、今回初めて国際大会に取り入れられました。
聴覚障害者で、デフリンピック自転車競技に出場経験のあるアスリートの早瀬さん。
2022年10月のスーパー耐久レースで、国内初のモータースポーツの手話実況に挑戦しました。
アナウンサーの実況音声を健聴者が手話通訳し、それを見ながら早瀬さんが手話で実況する2段階方式で、リアルタイムの手話実況を実現させました。
強弱をつけた手の動きや表情で、マシンのスピード感や現場の緊迫感などを表現。
早瀬さんも自転車で走ったことがあるというコースの特徴や、ドライバーの情報なども交えながら実況をしました。
また、今回の手話実況では、全日本ろうあ連盟の監修のもと、「タイムアタック」「コ・ドライバー」など専門用語の手話表現を考案。ラリーの魅力を当事者の言葉で届けました。
(手話実況を見た聴覚障害者は)
「これまでなんとなく速い、すごいということは映像を見て分かっていたが、手話実況で選手やコースの情報などを分かって観戦すると、ゴールした後の選手の表情が全く違って見えた。喜びなどがより伝わったし、それぞれの個性も見ることができた。」
一方、健聴者にも発見がありました。
(健聴者)
「モータースポーツは特に解説がないと分かりづらいスポーツだと思うで、こういうものがあると良いのでは。ほかのスポーツ中継にもあるといいと思う。」
「普段見かける手話よりダイナミックで、表情などから臨場感が伝わった。色々な人が楽しめるという意味で、すごく良い取り組みだと思う。」
スタジアムの外では4日間にわたり、来場者が手話実況を体験できるブースも設けられました。
スーパー耐久レースの映像に合わせて、レースならではの手話を使って実況します。
(ナレーション)
「一斉にスタートしていきました。最高速度が伸びて、その突き当りがヘアピンカーブ」
(参加者ら)
「(右手を前に勢いよく出して)スタート!」
「“最高速度”はどうやって表現する?」
「エンジン」「アクセル」などモータースポーツに関する単語の手話を学び、聞こえないも、子供から大人まで、一緒に楽しむ様子が見られました。
ブースにはトヨタ自動車の佐藤恒治社長も訪れ、自ら手話実況を体験しました。
岡山放送はスポーツの手話実況者を育成するべく、2023年度「OHK手話実況アカデミー」を新たに立ち上げ、ブースではその受講生たちが講師を務めました。
岡山市在住で聴覚障害者の漫才師、佐藤正士さんも約3カ月間の研修の成果を発揮しました。
(佐藤正士さん)
「手話を知らない人がたくさん来た。こんな手話表現か、難しいなど沢山声があがった。」
音声実況をそのまま通訳するのではなく、意味をくみ取り、手話で分かりやすく伝えるのが難しいところです。
手話実況を体験した健聴者は。
「顔を見て手の動きだけではなく、表情も大切だということを知った。」
ブースを体験した聴覚障害者も、手話実況は初めての挑戦でした。
「レース関係の新しい手話単語も学ぶことができて、分かりやすかった」
前年、スーパー耐久レースで初めて手話実況を行い、今回もメインの実況を務めた早瀬憲太郎さんは、健聴者でも手話実況を楽しめるといいます。
(早瀬憲太郎さん)
「モータースポーツはドライバーがヘルメットをかぶっているので顔が見えない競技。手話では表情もつけて伝えられるので、聞こえる人にもそうした部分も楽しんでもらいたい。手話の魅力が広まってほしい。」
障害がある人もない人も、よりレースを楽しめることが分かった手話実況の可能性。
2年後のデフリンピックでは、聴覚障害者がプレーし、聴覚障害者自身が伝える大会になるかもしれません。
リンク先は8OHKというサイトの記事になります。