聞こえているのに聞き取れない──。
近年、注目されているのが「聴覚情報処理障害/聞き取り困難症(APD/LiD)」だ。
聴力検査では異常はないのに聞き取りにくさを感じ、日常生活に支障をきたす。
APDの研究に力を入れ「マンガでわかるAPD 聴覚情報処理障害」の著者でもある大阪公立大学大学院医学研究科耳鼻咽喉病態学の阪本浩一氏に詳しく聞いた。
APDとは、通常の聴力検査では問題はないものの、騒がしい場所、電話越しといった相手の口元が見えない状況、会議など複数人が同時に話す場面など、特定の環境下で聞き取りにくさが生じる病態をいう。
普段から聞き返しや聞き間違えが多かったり、長い話の内容を理解しにくいのが特徴だ。
「学生の場合、先生が話している内容が聞き取れず授業についていけない、友人たちとの会話についていけないことで自覚します。学生時代には悩んでいなかった人が就職を機に上司の指示を聞き取れず、『なんで聞いていないのか』と指摘され初めて自覚するケースも少なくない。ただし、静かな場所での1対1の会話は問題なく行えるので周囲の理解を得にくく、“気にしすぎ”と片づけられやすい」
APDの人は音を感知する内耳、中耳、外耳の機能に問題はないものの、聴覚情報を処理する脳の中枢神経に何かしらの問題があり、聞き取りが困難になるとされている。
背景に発達障害が関係していると考えられ、阪本氏がこれまでに行った研究で関連性がより表面化しているという。
「APDと診断を受けた人の23%は発達障害を認めますが、その他にも診断には至らないグレーゾーンの方が多く含まれている可能性があります。また、80%以上は発達の凹凸が認められ、それを背景にした聞き取り困難の可能性があります。人は話を聞く際、相手に注意を向ける必要があります。しかし、発達障害のひとつADHD(注意欠如・多動症)の場合、特性によって聞き取るべき音を脳内で選択できないので、聞き取り困難が生じると考えられます」
ほかにも、心理的ストレスで一時的に聞き取り困難が生じる可能性が高いと考えられているが、原因が多岐にわたるので診断基準が定まっていない。
■診断できる医療機関は限られるのが現状
APDと診断される場合、まずは純音・語音聴力検査で異常がないことが前提になる。
大阪公立大学付属病院ではほかにも問診票(チェックリスト)、聴覚情報処理検査(APT)のほか、発達面や心理面の検査も行い、診断を下すという。
「検査量が多く時間と労力がかかるので、すべての耳鼻科で行うのは難しい。現状、診断できる病院が限られている問題があります」
実際、今年7月に耳鼻科医を対象に行った意識調査では、APDの診察経験があると回答した67%のうち、確定診断を下せたと回答したのは12%にとどまったという。
一般的な耳鼻科でも取り入れやすいAPD診断の手引を作成することを目的にして、阪本氏らは2021年から国の支援を受けながらAMED研究に取り組んでいる。
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