「聴覚障害への理解広めたい」デフリンピックまで1年、デフバレー日本代表・中田美緒選手

「聴覚障害への理解広めたい」デフリンピックまで1年、デフバレー日本代表・中田美緒選手

2024/11/15 21:20

聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」の開幕まで15日で1年となった。パラリンピックより古い1世紀の歴史があり、日本での開催は初となる。過去2大会に出場し、前々大会で金メダルを獲得したデフバレーボール女子日本代表の中田美緒選手(23)は「障害への理解を広められる機会になる」と意気込みを語った。(山本玲)

前々大会で金メダルを獲得したデフバレーボール女子日本代表の中田美緒選手(23)
インタビューに答える中田美緒選手=6日午後、東京都千代田区(山本玲撮影)


サッカーから転向

「毎日緊張しすぎて、おなかを壊してしまうくらい。頭もいっぱいいっぱいだった」。2017年にトルコ・サムスンで開催されたデフリンピックに参加した中田選手は、大舞台での体験をこう振り返った。

神奈川県出身。生まれつき耳がほとんど聞こえない。小さい頃から体を動かすのが好きで、近所で年上の男子とキャッチボールをし、小学校ではサッカーに没頭。健聴者に交じってボールを追いかけた。

バレーボールと出会ったのは中学の時。小学校では教諭とマンツーマンで勉強ができたが、見学に行った地元の中学では、教諭が生徒の方ではなく黒板を向いてしゃべっていた。

これだと口元を見て話す内容を推測できない。「授業の科目も増えるし、ちょっと無理かなと感じた」と聾学校の中学部へ進学。部活にサッカーがなく、バレーボール部に入った。すぐに頭角を現し、2年の冬に日本代表の合宿に呼ばれた。

強化合宿でプレーする中田美緒選手=今年3月、東京都北区(一般社団法人日本デフバレーボール協会提供)
強化合宿でプレーする中田美緒選手=今年3月、東京都北区(一般社団法人日本デフバレーボール協会提供)


手のサイン重要

主審がプレーを止めるために笛を吹いた後、気付かない選手のために副審がネットを揺らすなど細かな違いこそあるが、「デフバレー」の基本的なルールは健聴者のバレーと変わらない。

声で作戦の共有ができない分、アイコンタクトや手でのサインがより重要になる。選手同士の励まし合いも手話で行う。片手を頭の前でひらひらとさせると「切り替えて」、両手を絞りながら額から離す動作は「集中」という意味を表す。

2016年に世界選手権、翌年には初のデフリンピックを経験した中田選手。水泳や空手など他競技からも刺激をもらい、日本代表としての誇りを胸に刻んだ。「大会が進むごとに盛り上がりチーム力の高まりを肌で感じた。最高の舞台だった」


「レガシーに」

続くブラジル・カシアスドスル大会は、新型コロナウイルスの影響で準決勝を辞退し、連覇はかなわなかった。

1年後に迫る東京大会の目標は、もちろん金メダル。だが、中田選手は「大会を聴覚障害にかかわるレガシーにしたい」と夢を語り、「子供たちにも『デフリンピックっていうのがあるんだ。将来、目指したいな』と思ってもらえるようなプレーをみせたい」。


リンク先は産経新聞というサイトの記事になります。
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