日本科学未来館(略称:未来館 館長:浅川智恵子)は、「ロボット」「地球環境」「老い」をテーマに制作した4つの新しい常設展示を完成させ、2023年11月22日(水)から一般公開します。
さまざまな社会の課題との向き合い方や解決に向けたヒントを探っていくための、最新の科学技術にもとづく展示体験を広く提供していきます。
(中略)
■「老いパーク」
誰にでも訪れる「老い」について、身体に起こる変化やそれらを助ける技術など、科学技術の観点から注目した展示です。
多くの方が自覚しやすい目、耳、運動器、脳の老化現象を、6つの体験型展示で疑似的に実感していきます。
現在わかっている老化のメカニズムや対処法、研究開発中のサポート技術など老いとの付き合い方の対処法を紹介します。
体験の最後に「老い」と向き合う方々の人生の捉え方などを知ることで、皆さん一人ひとりにとっての豊かな老いとの付き合い方や生き方のヒントを探ります。
〇展示概要
STEP1:「老いってなんだろう?」
老化は自然な経年変化であり、誰にでも訪れます。
一方で、老いに対する捉え方は、時代や個人によってもさまざまです。
来館者が思う「老いの始まる年齢」をマッピングしたり、20年前と現代の高齢者の運動機能データを比較したりすることで、老いの捉え方にはばらつきがあり、年齢では定義できないものであることを実感していきます。
STEP2:「老いを体験しよう!」
目、耳、運動器、脳の老化現象とそれに伴うくらしの変化を疑似的に体験するエリアです。
さらに、それぞれの器官に変化が生じるメカニズムや、現在取りうる対処法、研究開発中の対処法をパネルや実物展示などから知ることで、老化現象とどのように付き合いながらくらしていけるかを理解し、自身の老いを想像します。
<目の老化>
・体験展示1:「老いパークガイド」
ぼやけている老いパークの展示ガイドを見ながら、手元が見えにくくなる老眼の見え方を体験します。
・体験展示2:「3つの○○なテレビゲーム」
白内障による変化(二重・三重に見える、まぶしく感じる、黄色みがかかる)を、それぞれ3種類のゲームで再現しました。
視覚変化によってゲームが困難になることを体感します。
・現在の対処法では、老眼に対しては老眼鏡、白内障に対しては眼内レンズ手術などが一般的です。
文字を音へ変換する技術も利用できます。
研究開発中の対処法として、見ているものの距離をセンサーで測定し、レンズの厚みを瞬時に変化させ、目のピント調節をサポートする眼鏡型アイウェアを紹介します。
<耳の老化>
・体験展示:「サトウの達人」
受付窓口で呼ばれる子音違いの名前の中から「サトウさん」のときに挙手ボタンを押すゲームです。
耳が老化すると高音域から聞こえにくくなるため、高音域の子音(S、K、など)の聞き分けにくさを体験します。
・現在の対処法では補聴器や人工内耳を利用する方法があります。
また、音声を文字へ自動変換することで聴力の低下を補うツールも紹介します。
研究開発中の対処法として、耳の機能を根本的に回復させるために、メカニズムの解明を目指す研究を紹介します。
<運動器の老化>
・体験展示:「スーパーへGO」
運動器の老化による移動能力の変化を体験します。
近場のスーパーまで歩いて買い物に行く体験を再現したシミュレーターです。
運動器が老化すると、筋力の低下、姿勢の変化などから長距離を歩くことや、早く歩くことが難しくなります。
・現在の対処法では、身体の動きをサポートするデバイスや操作のしやすいモビリティが活用されています。
研究開発中の対処法では、重心移動だけで簡単に操作できるパーソナルモビリティを紹介します。
※「運動器」は、身体の動きに関わる骨、関節、筋肉、神経などの総称です。
<脳の老化>
・体験展示1:「おつかいマスターズ」
日常生活のなかでの「覚えにくさ」を体験します。
買い物リストに書かれた商品を記憶して、目の前にあるスーパーの陳列棚から探して正しく買うことができるか挑戦するゲームです。
脳が老化すると、短期記憶、注意力、処理速度が低下しやすくなります。
記憶の途中で注意力を邪魔されたりするとさらに覚えにくくなります。
・体験展示2:「笑って怒ってハイチーズ!」
プリントシール機で喜びと怒りの表情を撮影すると、自動的に怒りの表情が「読み取りにくい顔」に加工処理されて印刷されます。
老化により喜び以外の相手の表情が読み取りにくくなる傾向があることを客観視できる体験です。
・現在の対処法では、テクノロジーを活用したり日ごろのくらし方を工夫したりすることで、困りごとを少なくしていきます。
また環境が整った施設やサービスを利用することもできます。
研究開発中の対処法として、介護施設で利用者に寄り添ったコミュニケーションを行う子ども型見守り介護ロボットを紹介します。
体験エリアの先では、未来の「老い」の捉え方を変えるかもしれない研究や取り組みをインタビュー動画で紹介しています。
抗老化に関する医学研究が進むと老化は治療できるものになる可能性もあります。
また、高齢者の社会へのかかわり方が変わると、文化的な側面や個々の健康にも変化があるかもしれません。
「老い」に対してさまざまな方向からアプローチしている4名にインタビューを行い、研究や活動の内容、目指している未来像、研究の課題について紹介しています。
STEP3:「自分らしい老いって?」
STEP2での疑似体験や対処法の理解をふまえて、「自身の望ましい老い」を考えるエリアです。
すでに老いを感じている方に「将来やりたいこと」を尋ねたインタビュー映像を見たり、来館者自身が70歳になったときにやりたいことに答えたりしながら、「老い」は誰の人生の延長線上にもあり、さまざまな選択があることに気づくきっかけを作ります。
〇総合監修者 荒井 秀典氏
老いは、年を重ねれば誰にでも訪れます。老化を緩やかにするためには、睡眠、栄養、運動が重要です。
しかし、個人差こそあれ老いは避けられません。老いることはすなわち生きることそのものだと思います。
変化を受け入れ、上手に付き合っていくことも人生100年時代には必要かもしれません。
今回、多くの方が変化を感じる目、耳、運動器、脳の4つの老化を総合的に取り上げる場ができたことは、健康長寿を研究する立場からすると画期的なことと思います。
この展示を通して、老いとの付き合い方を想像しましょう。今の生活を振り返ることにもつながるかもしれませんね。
設置エリア:3階 常設展示ゾーン「未来をつくる」
総合監修:荒井 秀典氏(国立長寿医療研究センター 理事長)
監修:
[視覚]稲冨 勉氏(国立長寿医療研究センター眼科感覚器 センター長)
[聴覚]内田 育恵氏(愛知医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科 教授)
[認知機能]櫻井 孝氏(国立長寿医療研究センター 研究所長)
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