耳を疲れさせない「イヤホンの使い方と選び方」 会議、動画視聴、ゲーム…身近な「イヤホン難聴」

耳を疲れさせない「イヤホンの使い方と選び方」 会議、動画視聴、ゲーム…身近な「イヤホン難聴」

WHO(世界保健機関)によると、世界で11億人もの若者が難聴のリスクを背負っているそうです。

音楽プレイヤーやスマートフォンの長時間の使用、また、クラブやライブでさらされる大音量。

電車の中などで、隣の若者のイヤホンから漏れ出る音がしばしばトラブルになりますが、もっと深刻な問題があります。

イヤホンをしている若者自身の健康に影響が及ぶ可能性が指摘されているのです。

そこで、シンガーソングライターでもある木村至信先生にどうやって耳を大切にしていくかについて『1万人の耳の悩みを解決した医師が教える 耳鳴りと難聴のリセット法』から紹介します。

耳を疲れさせないイヤホンの使い方
最近、若い人の難聴が増えています。考えられる原因のひとつが、イヤホンの長時間使用による「耳の疲れ」。

リモート会議に参加するため、あるいは、音楽を聴いたりゲームを楽しんだりするため、イヤホンを長時間着けっぱなしにしている人は、耳を疲れさせています。

ここでは、耳の健康のことを考えたスマホ用イヤホンの正しい使い方、選び方を紹介します。

まずは、1つめのポイント。

長時間ずっと使うことは避けましょう。

最新の「ワイヤレスイヤホン」や「ゲーミングイヤホン」は耳のかなり奥まで入りますし、耳を密封して空気が通りにくい。

これを長く着けっぱなしにしていると、「外耳炎」になることがあります。

外耳炎は、耳の入り口から中耳につながる「外耳道」の炎症です。

外耳炎が進行すると、真菌(カビや酵母など)が繁殖することがあります。

真菌が増えると、さらに外耳炎が悪化して、かゆみ、痛み、耳垢の異常増加、赤み、腫れ、そして難聴などの症状が現れることがあります。

2つめのポイント。

どうしてもイヤホンが必要なら、耳に入れるゴムの部分が柔らかいものを選んでください。

大切なのは、外耳道を傷つけないこと。ゴムアレルギーのある人は、素材を確認してください。

3つめのポイント。

使うならノイズキャンセリングイヤホンが比較的、安心です。

周囲の騒音を抑えることで、聞きたい音の音量を上げる必要がなくなり、耳への負担が軽減されるからです。

逆に、ハイレゾ対応イヤホンは避けてください。

ハイレゾは音楽データの情報量がとても多く、人が感知できない音域の音まで含んでいるため、耳を必要以上に疲れさせます。

そして、できればイヤホンではなく、ヘッドホンを使ってください。

それも密閉しないタイプが望ましいです。

耳を塞がない「骨伝導ヘッドホン」や「ネックスピーカー」もいいでしょう。

メジャーリーグの大谷翔平選手が使っていると話題になったノイズキャンセリングのヘッドホンなら言うことはありません。

また、電話なら固定電話であれスマホであれ、スピーカーでの通話(スピーカーホン)を使うほうが断然いい。

音の発信源が鼓膜からなるべく離れているほうが、耳には優しいからです。

4つめのポイントは、音量を上げすぎないこと。

そして、5つめのポイント。イヤホンを使うのは1回1時間以内にしましょう。

なにより大切なのは、耳を休ませることです。

「耳の老化」は意外なところからやってくる
みなさんの耳は大丈夫でしょうか。まず次のチェックリストをやってみてください。

□人の話を聞き返すことが増えた
□声が大きくなったと周りの人に言われる
□1日3時間以上、連続でテレビでドラマなどを観ている
□工事現場、BGMの大きな店、ライブハウスなどで働いている
□仕事でインカムをよく使っている(使っていた)
□1日2時間以上、連続でイヤホンやヘッドホンをつけている
□親戚に難聴の人がいる
□健康診断で生活習慣病を注意されたことがある
□タバコを長年吸っている
□週3回以上お酒を飲む
□甘いものが大好きで毎日食べる
□ストレスを感じることが多い

いかがでしたか。

「テレビでドラマを観ている」「タバコを吸っている」「甘いものが好き」など、難聴や耳鳴りとは関係なさそうな項目が入っていて、意外に思う人もいるでしょう。

でも、いずれも耳の老化を進める要因です。

たとえば、お酒を飲みすぎたり、甘いものを食べすぎたりする人は、血流が悪くなりやすくなります。耳周辺の血流の悪化は、耳を老化させる大きな要因になります。このような生活習慣を長年続けると、確実に耳の老化は進みます。

ですので、もしひとつでもチェックがついたら、遠からず「難聴」や「耳鳴り」に苦しむことになる可能性が高いといえるでしょう。

耳を酷使する職業の人は気をつけて
「難聴かもしれない」
「耳鳴りがひどい」
「病院に行っても改善しない」
「日常生活に支障をきたすほどではないけれど、耳が遠くなってきて不安だ」

これらの症状は、いずれも「耳の老化」が原因です。医学的には「加齢性難聴」といわれています。

加齢性難聴は、歳とともに聞こえにくくなるもので、少しずつ進行していきます。

そして、人によって進み方は違います。

耳を酷使する職業の人は、どうしても難聴になりやすくなります。

楽器を演奏する音楽家も、例外ではありません。

音に集中するし、何時間も練習しますから、これはもうしかたないのです。

バイオリンは耳のすぐそばで鳴らすせいで、バイオリニストも難聴になりやすいといわれます。

エレキギターは高音が多いので「高音の難聴」になりやすいといわれます。

ドラムを叩く人は、まんべんなく聴力が下がります。

道路工事、飛行機の整備、機械工作などの仕事で、長い期間、やかましい音にさらされて聴力が低下した「騒音性難聴」は治療が難しくなります。

騒音にさらされていたのが半年か1年ぐらいであれば回復もあり得るのですが、長期間になるとリセットしにくく難しくなります。

62歳の私の患者さんがまさにそうでした。

彼は若い頃から難聴が出ていて、私のクリニックに来たときは重度の難聴になっていました。

長年、工事現場で働いていたことが原因です。

彼は日常生活に支障がないレベルまで回復することができましたが、それでも治療に4カ月かかりました。

工場や工事現場で仕事をする人は、できるだけ耳栓をしてください。

死んだ神経を回復させられるかどうかは、細胞年齢によります。

若い人はまだいいのですが、騒音曝露が30代、40代、50代とずっと続いていたとすると、回復は本当に難しくなります。

耳は「感覚器」のひとつです。

感覚器とは、聴覚・視覚・嗅覚・味覚などを使って、外からの刺激を認識するための器官です。

すべての感覚器は人生の色合いを変え、「生活の質(QOL)」に影響します。感覚器が衰えると、私たちの生活の質も一緒に衰えます。

聴力は「コミュニケーションの要」
ためしに1時間くらい、耳を塞いで過ごしてみてください。

楽しくないはずです。

テレビを見ても音声が聞こえないし、話しかけられてもわからないから適当に返事をすることになります。

すると会話が広がらないので、相手は話しかけてこなくなります。

そうなると、人を避けて一人でいたくなるでしょう。

生まれつき聞こえない人は、口に問題はないのに、自然に言葉を話せるようにはなりません。

耳が悪い人は「聞こえない(聾)」だけでなく「話せない(唖)」のです。

これに似た現象は、加齢による難聴でも起こります。

耳はたんに「聞く」機能をもつだけの器官ではありません。

耳は、ドラマや音楽を楽しむときに必要だというだけではなく、人とコミュニケーションをとるときに必要な器官です。

耳がよくないと、行き違いや誤解が増えて、人との関係が悪くなり、生活が楽しくなくなります。

私たちの生活の質を支えている感覚器は耳だといっても過言ではありません。

「聞く」「話す」に直結する耳は、「コミュニケーションの要」だと言っていいでしょう。

要だからこそ、程度の軽い難聴でも、コミュニケーションに影響が出てしまいます。

イヤホンの使い方ひとつで、耳へのダメージを軽くすることができます。

普段から耳のケアを心がけてください。

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