4月からの義務化でどう変わる?障害者の就労「合理的配慮」とは

4月からの義務化でどう変わる?障害者の就労「合理的配慮」とは

「合理的配慮」という言葉をご存じでしょうか。障害者が暮らしの中で直面する困りごとを解決するための配慮や調整のことで、4月から民間企業に義務化されます。合理的配慮によって障害者の就労環境はどう変わるのか、取材しました。

富山県の高岡高等支援学校。比較的軽度の知的障害がある生徒が通う高等部のみの特別支援学校です。

生徒たちは働くために必要な知識や技能、それに態度を身につけるため、作業学習を通して実践的な力を養っています。一般企業に就職できるのは卒業生のおよそ7割です。

3年生の川原塁(かわはらるい)さん(18)。計算は少し苦手ですが、パソコンの分解は得意分野です。

高岡高等支援学校3年生 川原塁さん:
「分解した部品はまたリサイクルで使われるので、また新しい物に使われたらいいなと思いながら分解しています」

卒業後、射水市内の会社で働くことが決まっています。

川原さん
「初めての給料は家族と焼き肉に行ったりしたいなと思ってます。みんなの分、出したいと思ってます」

川原さんのように障害者雇用枠で働く人に対し、来月から企業側に法的に義務化されるのが「合理的配慮」です。

企業への「合理的配慮」引継ぎが課題…

「合理的配慮」とは障害者のニーズに応じて日常生活の困りごとを解決するための対応や調整のこと。例えば、車いすを利用している人が段差によって店に入れない場合、店側に介助を求めたり、スロープを設置するなどの取り組みを指します。

合理的配慮とはの図

これまで民間事業者は努力義務とされてきましたが、障害を理由とした不当な差別を禁止する障害者差別解消法の改正によって、来月からは国や自治体と同様に合理的配慮の提供が義務化されます。

合理的配慮提供の図

そんな中、課題として挙げられるのは学校から企業への「合理的配慮」の引継ぎです。

高岡高等支援学校 奥絹恵教諭:「合理的配慮は生徒1人1人の個人票の中にも書かれていますので、まずは学校で授業の中で配慮をしています。漢字が読むのが苦手な生徒だったら読みがなを振るとか。この後会社に行く時に合理的配慮をもっていくんですけど、例えば2つ以上の指示が難しい時は1つずつお願いしますとかいうふうな合理的配慮を伝えるようにはしております」

川原さんが就職するプレステージ・インターナショナルです。自動車保険のロードサービスや海外旅行保険のサポートなど幅広い分野のコールセンター業務を行っています。

可能性が感じられ、今後が非常に楽しみ…

川原さんは去年、プレステージで就業体験を実施。4週間にわたって清掃業務を担当し、仕事に真面目に取り組む姿勢などが評価され、クリーンスタッフとして採用が決まりました。来月からは食堂や社員ロッカーの清掃に従事します。

プレステージではこれまでも障害者雇用をしてきましたが、新卒で知的障害者を採用したのは川原さんが初めてです。

プレステージ・インターナショナル

金沢幸昌 富山管理部長:「清掃をやっていく中でちょっとしたトラブルですとか、悩みだとか、そういったものが出てくるか、なかなか読めてないところがありますので、まずは声を聞きながら進めていきたいなとは思ってます」

採用の背景には、障害者の法定雇用率があります。現在、民間企業の障害者の法定雇用率は2・3%ですが、法改正により来月からは2・5%、2026年7月には2・7%と段階的な引き上げが決まっています。企業は障害者の雇用を増やし、合理的配慮にも対応しなければならないのです。

障害者の法定雇用率の図

就労応援コーディネーターの関口利浩さん。川原さんとプレステージをつないだ交渉人です。関口さんは特別支援学校に通う生徒の就業体験の受け入れなどを企業にお願いし、生徒たちの雇用先を開拓しています。企業が合理的配慮を提供するためには就業体験は不可欠だと言います。

就労応援コーディネーター 関口利浩さん:「やっぱり障害者っていうのは『できない』とか『危ない』とか『いつもそばについていないといけない』とか。先入観念みたいなものがありまして、もちろんそういう子もいますけどそうじゃない子もたくさんいるんですね。1人1人を見ていただいていからまたお話していただければいいかなと私は思っております」

金沢幸昌 富山管理部長:「就労体験のところでかなり長い期間、実際働いてもらってましたので、今回は清掃をメインでお仕事を用意させていただいたんですけど、若いですし、これからいろいろ(仕事の)幅とかも広げていけるんじゃないかなという可能性も感じられたので、非常に楽しみにしております」

合理的配慮に対応しにくい企業も…

一方、こちらは高岡市にあるリサイクル会社の荒木商会。障害者雇用のリーディングカンパニーです。特別支援学校に通う生徒の就職を応援する企業を集めた『就労応援団』に最初に登録し、10年前から障害者雇用を始めています。今は従業員の1割以上が障害者で、法定雇用率を大きく上回ってます。

その中の一人、吉井謙一さん(55)。知的障害があります。ごみの分別作業を担当していて入社9年目の今では分別のエキスパートです。

毛田キャスター:「お仕事難しいですか」

吉井謙一さん:「簡単」

毛田キャスター:「さすがですね」


荒木商会 荒木信幸社長:「エキスパート。あれだけたくさんのね、分別できるようになったしね。吉井さんに任せとけばね、ここみんなきれいになる」


荒木社長は障害者の特性に応じた適材適所の業務を見つけることが、合理的配慮の大事な要素だと話します。

荒木商会 荒木信幸社長:「例えば現場に行ってあれもこれもしてって指示とかっていうのはやっぱりなかなか動きづらくなっちゃうんで、混乱もしちゃうんで。頭の中で整理できるところのポジションて何かなって思った時には、そこの1点集中の仕事をきっちりとプロになっていってもらうっていうところがもしかしたら特性における配慮の1つの考え方かもしれませんね」

しかし、業種によっては合理的配慮に対応しにくい企業もあり、業務の洗い出しが課題だと話します。

荒木商会 荒木信幸社長:「要はその人に合わせた仕事づくりを会社ができる会社の体質にしていかないと。僕らの仕事は幸いにしてけっこう仕事の切り分けで細分化しやすいんですよ。これがけっこうできる業種とできない業種ってすごくやっぱりあるんじゃないかなと思います」

民間企業への義務化が目前に迫る合理的配慮。障害の有無に関係なく働ける共生社会の実現に向けて企業の対応が問われています。

リンク先はチューリップテレビというサイトの記事になります。
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