NHKニュース7 高井正智アナ “命を守る呼びかけ” を もっと多くの人に届けるために

NHKニュース7 高井正智アナ “命を守る呼びかけ” を もっと多くの人に届けるために

ことばで命を守る「障害のある人への呼びかけ」①

2024年7月11日

高井 正智 アナウンス室/「NHKニュース7(金土日祝)」「先人たちの底力 知恵泉」

“命を守る呼びかけ” を もっと多くの人へ”と書かれた番組画面の写真


「家が半壊し、中に閉じ込められいて、外に出られないという通報があったということです。消防が、現場で救助活動にあたっています」。

2024年1月1日。
能登半島地震の発生から3時間あまり。
私は、スタジオから徐々に明らかになってきた被害の状況を伝えていました。

激しい揺れに見舞われ、能登地方の各地では、建物が倒壊。閉じ込められた人たちの救助活動が始まっていました。

その時、私は、こう「呼びかけ」ました。

「耳の聞こえない方は、助けが来たことに気づくことが出来ません。まわりにそういう方が取り残されていないか、確認をお願いします」

アナウンスはもちろん、NHKの様々な部署が連携し、作り上げてきたことば「命を守る呼びかけ」。発災直後、「障害のある人」を強く意識して行ったのが、この呼びかけです。

障害がある人のための呼びかけは「SNS」でも行いました。視覚や聴覚に障害のある人のための短い動画を作り、発信しました。

NHKの動画の画像「【動画】高井正智アナウンサー | 聴覚障害のある人 避難所で大切なこと」

NHKの動画の画像「【動画】井上二郎アナウンサー | 視覚障害のある人 避難所で大切なこと」

これらの呼びかけには、さまざまな反響が寄せられました。

誰もが厳しい状況に置かれているとは思うけれど、避難所の運営者の方が少し配慮してくださると、ろう者の命がホントに助かるので、 「文字情報の提供」を切にお願いしたい。

自分は聴覚障害があり、はっきり言葉が聞こえないので万が一、被災者になった時の事が不安なので避難場所で必要な情報を書いて掲示する事が常識になるのを祈ります。


障害のある人のために

左から森下絵理香アナ、山内泉アナ、筆者、川口由梨香アナの写真
左から森下絵理香アナ、山内泉アナ、筆者、川口由梨香アナ

NHKのアナウンサーは、災害時に、避難や安全確保の行動を促したり、気持ちに寄り添ったりすることばを届ける「命を守る呼びかけ」に取り組んでいます。

呼びかけのことばは、東日本大震災以降、被災された方々への取材、専門家・記者・ディレクターとの意見交換、アナウンサーが積み重ねてきた経験をもとに、地震、津波、豪雨、大雪、熱中症などさまざまな災害について、練られてきました。

参考記事:「ことばの力」信じられなかった報道アナウンサー 能登半島地震から思うこと ~NHKアナウンサー「『命を守る呼びかけ』プロジェクト」~ |NHK広報局 (note.com)

その文言をホームページやNHKニュース・防災アプリなどで広く公開して地域、学校、企業などで活用できるようにしています。

NHKのバナー「NHKアナウンサー命を守る”防災の”呼びかけ」
「障害のある人のための呼びかけ」プロジェクトのはじまりは、去年(2023)5月。本格的な梅雨の時期を前にした会議でのことでした。

「「災害弱者とされる人たちに、届けることばはないだろうか?」

災害時に、情報を受け取れない人、避難に時間がかかる人、一人で避難できない人たちがいる。そういう人たちの助けになる呼びかけを考えることが出来ないか、というのです。

この提案を聞いて、私は災害現場での取材を思い出していました。


「自力で逃げることができなかった人」と「後悔のことば」

2011年東日本大震災 津波で被害を受けた宮城県石巻市の写真
2011年東日本大震災 津波で被害を受けた宮城県石巻市

私は、現場リポーターとして、全国各地の災害現場を取材してきました。

津波で被災した地域では、自力で「歩くことができず」、逃げるのをあきらめた人がいました。
土石流の現場では、防災行政無線の音が「聞こえず」、逃げ遅れた人がいました。
豪雨による災害では、「知的障害」のある人が犠牲になりました。

どの現場にも「自力で逃げることができなかった人」の姿があったのです。
そして、そこには残された人の「後悔のことば」がありました。

「自分が声をかけていれば…」
「一緒に逃げていれば、助かったかもしれない…」

こうしたことばを目の当たりにするたびに、心が引き裂かれ、無力感にさいなまれました。

災害現場から1つでも後悔のことばをなくすために、せめて1つでも出来ることはないのか―。今回の呼びかけ作成の取り組みは、過去の取材経験と向き合いながら進む時間でもありました。


呼びかけをもっと
“みんなのもの”にしたい

今回の呼びかけの作成には、ニュースや福祉など、担当番組の枠を超えて、さまざまなアナウンサーが携わっています。多種多様なメンバーで、ともに学び、力を合わせれば、より多くの人に届くことばを紡げるのではないか、と考えたからです。

「視覚障害」「聴覚障害」「身体障害」「知的障害」などについて、全国各地の当事者のみなさんや障害や災害支援に詳しい人たちにご協力いただき、若手からベテランまで幅広いアナウンサーが取材に参加する形で進めていきました。

障害のある人たちは災害時、どのような状況に置かれるのか―。公開中の呼びかけや、各アナウンサーが執筆した記事をご覧いただければ幸いです。

高井 正智さんの写真

高井 正智
アナウンス室/「NHKニュース7(金土日祝)」「先人たちの底力 知恵泉」

2002年入局。アナウンス室。「NHKニュース7」金土日祝キャスター。「先人たちの底力 知恵泉」5代目店主。「ニュースウオッチ9」「週刊ニュース深読み」「ニュース7」では、現場リポーター・スタジオキャスターとして、東日本大震災・熊本地震・能登半島地震をはじめとした地震、広島土砂災害・関東東北豪雨などの豪雨災害など、災害報道に携わる。今回のプロジェクトのとりまとめを担う。

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