主な事実：
- 乳児は音楽よりも多くの会話に触れており、この傾向は時間とともに増加します。
- 乳児の環境における音楽の大部分は電子機器から供給されるのに対し、会話は主に対面で行われます。
- この研究では、乳児の聴覚環境を詳細に把握するために一日中の音声録音を使用しました。
出典: ワシントン大学
音楽と会話は乳児の聴覚環境の主要な要素です。これまでの研究では、会話が子供の言語発達において重要な役割を果たすことが示されていますが、乳児が聞く音楽についてはあまり知られていませんでした。
ワシントン大学の新しい研究は、乳児期に子供が聞く音楽と会話の量を比較した最初の研究であり、2023年5月21日に『Developmental Science』に発表されました。結果は、乳児が音楽よりも多くの会話に触れており、その差は成長するにつれて広がることを示しています。
「私たちは乳児の家庭環境で何が起こっているのかを把握したいと考えました」と、ワシントン大学の言語聴覚科学研究助手教授であるクリスティーナ・ジャオ氏（筆頭著者）は述べています。
「多くの研究が、乳児が家庭でどれだけの言葉を聞くかを調査しており、言語発達には乳児向けの話しかけが重要であることが示されています。しかし、乳児がどのような音楽を聞いているのか、その音楽が会話とどう比較されるのかについては何も分かっていないことに気付きました。」
研究者たちは、英語を学ぶ乳児が6か月、10か月、14か月、18か月、24か月の時に家庭環境で収集された一日中の音声録音データセットを分析しました。すべての年齢で、乳児は対面よりも電子機器からの音楽に多く触れていました。このパターンは会話においては逆で、乳児向けの会話の割合は時間とともに大幅に増加しましたが、音楽に関しては同じままでした。
「これらの録音に音楽がほとんど含まれていないことに驚きました」と、学習・脳科学研究所（I-LABS）に所属する早期聴覚知覚研究所（LEAP）のディレクターでもあるジャオ氏は述べています。
「音楽の大部分は乳児向けではありません。これらはバックグラウンドで流れている曲や、車の中のラジオで流れている曲だと考えられます。多くは単なる環境音楽です。」
これは、ジャオ氏とそのチームが以前に実施した実験室設定での非常に魅力的で、多感覚的な動きに基づく音楽介入とは異なります。これらのセッションでは、音楽が流れる中で乳児に楽器を与え、研究者が介護者に乳児の動きを音楽に同期させる方法を教えました。対照群の乳児は、単に遊ぶために実験室に来ました。
「その実験を2回行いました」とジャオ氏は述べています。「どちらの実験でも同じ結果が得られました。音楽介入が乳児の言語音への神経応答を強化していました。この結果から、現実世界ではどうなるかを考えるようになりました。この研究はその大きな疑問に対する第一歩です。」
過去の研究は主に、乳児の環境における音楽の入力を調査するために質的および量的な親の報告に頼っていましたが、親は子供に話しかけたり歌ったりする量を過大評価する傾向があります。
この研究は、Language Environment Analysis（LENA）録音デバイスを使用して行った一日中の聴覚録音を分析することで、そのギャップを埋めました。録音はもともと別の研究のために作成され、各録音年齢で1日最大16時間、2日間にわたって乳児の自然な音環境を記録しました。
研究者たちは、Zooniverseプラットフォームを通じて市民科学の力を借りてLENAデータの注釈付けプロセスをクラウドソーシングしました。ボランティアはクリップに会話や音楽が含まれているかを判断しました。
会話や音楽が特定された場合、リスナーはそれが対面か電子機器からかをさらに判断しました。最後に、その会話や音楽が乳児向けであるかどうかを評価しました。
この研究は限られたサンプルを特徴としていたため、研究者たちは結果をさまざまな文化や人口に一般化できるかどうかを確認するためにデータセットを拡大することに関心を持っています。後続の研究では、ラテン系家族の乳児からの同じ種類のLENA録音を調査します。音声録音には文脈が欠けているため、研究者たちは乳児の生活の中で音楽の瞬間がいつ発生するのかにも興味を持っています。
「音楽入力がこれらの乳児の後の発達のマイルストーンと相関があるかどうかを知りたいです」とジャオ氏は述べています。
「会話入力が後の言語スキルと高度に相関していることは分かっています。私たちのデータでは、会話と音楽の入力は相関していないことが分かります。つまり、たくさん話す家庭がたくさん音楽を流すわけではないのです。音楽が発達の特定の側面により独立して貢献するかどうかを確認しようとしています。」
音楽、言語、神経発達に関する研究ニュース
著者: ローレン・カシュマン
出典: ワシントン大学
連絡先: ローレン・カシュマン – ワシントン大学
画像: Neuroscience News提供
原著論文: 閉鎖アクセス
「北米の乳児の家庭環境における最初の2年間の会話と音楽の入力の比較」
クリスティーナ・ジャオ他
『Developmental Science』
リンク先はアメリカのNeuroscience Newsというサイトの記事になります。（原文：英語）