<「難聴」という言葉>
先日Hearing Trackerというアメリカの会社のHPに掲載された記事が、
いつもJINOで実現したいと事あるごとにお伝えしている
『視力のように、自分の聴力を言える人を増やしたい』
という取り組みについての紹介でした。
元記事内(本ブログに訳文掲載いたします。)にもあるように
難聴というと、手話が使えるのね!と言われたり
補聴器を使っていると、四方完全な聞こえ方をする、
と思われてしまったりします。
その理由の多くは社会の大多数の人が
自分の聞こえ方、にあまり興味がないから。
数字に関して言えば、難聴の当事者の方でも
ご自分の聴力を数字で正確に覚えている方は少ないです。
ご自身の聞こえ方について
感じ方と、数字=主観と客観 の
両方で知ることは、その方にとっても有益なのですが
残念ながらあまり浸透していないんです。
その現状に啓発活動として始められたのが今回ご紹介する
“Hearing number”という取り組み。
記事の翻訳を下記に紹介します。元の記事はこちら↓
翻訳掲載についてはHearing TrackerのDr, Baileyに許諾いただいています。
以下翻訳(意訳も含みます)
<Hearing numberは難聴を説明するのに役立ちます>
「難聴」という言葉は複雑な概念を表現するための言葉として少し難しく不正確です。
私が難聴を持っていると周りの人に説明するとき、私は全く音が聞こえないから手話が必要だと思ってくれて、手話を使ってコミュニケーションを取ってくれることがあります。逆のことも起こって、補聴器を使っているのでどんな音も完璧に聞こえると思われてしまう事があります。
難聴の当事者である私たちからすると、この2つの状態の間にいるのが私たち。ある状況ではよく聞こえても、違う状況では聞こえに苦労することがあるので、それを体験したことのない人に伝えても混乱させてしまうことがあります。
私たちの難聴の状態を他の人に説明するのはとても難しく、どんな言葉で説明するのが良いのか、実際にどれほどの難聴なのか、ということを言葉に表現するのは難しいものです。
また、「軽度」とか「重度」といったような難聴の度合いについての説明はその状況を想像する力に依存する部分がとても多くて、私たちが難聴を持つことによって家族や友人、同僚などとのコミュニケーションに悩みを持ったり、孤立感を感じてしまったりする状態を上手に説明するのにもっと良い法王はない物か、ということは常々思っている事でした。
<“hearing number”って?>
今年の10月にいくつかの難聴企業と非営利団体とが協力して、Hearing 20/20 という新しい公衆衛生のキャンペーンを始めました。その開始にあたって一つの提案がありました。視力で用いられる20/20※という標準値と同じような客観的な数値を聴力にも当てはめ、それを社会の人々が皆知っていている状況がベストである、という提案です。
※アメリカで視覚検査をする際に使われる数値(20フィート(約6m)離れた場所から検査をするそう。20/20は平均的な視力(日本の視力検査でいうと1.0と同等)のこと。
聴力の検査において、使用される数値はデシベルという単位を使います。(※注 これは日本でも全く同じです。)26dB~40dBが軽度・41dB~60dBが中等度という形で区分されるので20dBという数字は視力で言う20と同様に、平均的という意味を持ちます。
※Hearing numberのテスト<リンクURL>:
<Hearing numberは機能する?>
私はこのより客観的な難聴の測定する値を作って周りの人とコミュニケーションを取りやすくするというアイデアがとても好きです。
そしてこのHearing 20/20のキャンペーンの一番の目的は、この数値という客観的な数値を知ることで、より専門的なクリニックでの聴力検査を受けるように動機づけをすることです。
聴力は複雑で、クリニックでのしっかりした検査では複数の高さの音(注釈:主に125、250、500、1000、2000、4000、8000Hzの周波数で計測します。)を調べる必要があります。
このHearing 20/20ではそこまでの詳細を知ることはできません。
ですが、このプログラムは2つの重要なメッセージを持っています。
1つは聴覚のケアをすることは、体全体の健康の維持にとっても大切であって、定期的にしっかりとその変化を見守っていく事が重要だという気づき。
もう1つは、難聴を持っている人やその周囲の人たちがその状況を理解しやすいように、聴力というものに対してわかりやすく示すことの出来る方法を見つける必要があるという啓発です。
この活動を見てとても嬉しく思っています。
シャリ・エバーツ
Hearing health advocate
記事の翻訳は以上です。
この記事を書いたシャリさんは、
聴覚ヘルスケアの啓発家(日本語にするとなんかややこしいですね。)であり、
文筆・講演をする傍らビクラムヨガの推進家だそうです。
またLivingWithHearingLoss でブログを書いていらっしゃり、
アメリカ難聴協会の理事もなさっているそう。
シャリさんご本人は成人で発症された遺伝性難聴で、
彼女の話を共有することで、
他の人が自分の聴覚に関わる問題に対して
平和に暮らせるようになることを願って
色々な活動をされているそうです。
<当事者の声、自分ゴト化への希望>
今の社会では大多数の人に合わせて色々なものが作られる傾向にあります。
解りやすい例でいうと、多くの製品が右利きの人に使いやすく出来ていて
左利きの人には使いにくいものが沢山あるような。
私の家族で言えば車いすの人にとって街中は、
歩ける人には気づきづらい段差だらけで大変疲れます。
聴覚障害を持つ人にとっては、
電車の突然の遅れが目で分かる情報がなければ
何が起きたのかを知るのに不安ばかりになったりします。
様々な障害はもちろん、ベビーカーを使う親御さんにとっても
杖を使って歩く方にとっても、その人の立場から見ると
実は至る所に不便や不都合が埋まっています。
当時者になってみないと気づかないことだらけで、
自分が当事者でなくなってしまえば
意識の外に出てしまうようなことも沢山。
今回ご紹介したキャンペーンのように
誰もが過ごしやすい環境を社会みんなで作って行けるような
気づきの提案はもちろん、
仕組みそのものを色々な立場の人の目線に立って作ることが
当たり前な社会になったらよいな、と思っています。
沢山の当事者の方々に声を挙げていただいて
当事者の周囲の人間が気づいていって
少しずつ良い方に変化していきますように。
お読みいただきありがとうございました。
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LMH 郷司