<補聴器のオタクとして>
初めて会う方に
「おススメの補聴器ありますか?」
というご質問を頂くことがあります。
補聴器に関わる方なら皆さん絶対即答できないこのご質問。
即答できない理由をシンプルにまとめると理由は4つ
1つ目に聴力
2つ目にその方が補聴器をつけてどうなりたいか
3つ目にその方の音の好み
4つ目にご予算。
少なくともこの4つが解らないうちには回答が難しい質問なんです。
以前、友人がソムリエの資格を取った時に
何気なく『お勧めのワインってどうやって選ぶの?』
と軽い気持ちで聞いてしまったのですが、
勘の良いあなた、お気づきかと思います。
友人の回答は
『ワインを飲む季節と時間、一緒に食べる食事、
一緒に過ごす人、予算、味の好みとかが解ればお勧めできるよ』
でした。
そうか、そうだよね!とその時に友人に言われて
初めて気づいたのですが五感をフルに使うもの
相手の方のことを何も知らずにおススメするのは
無責任だもんな~と思ったのです。
そしてこの仕事を初めて同じように感じています。
私は一応、補聴器オタク?マニア?というのか
とにかく沢山勉強をし続けていることと
常に新しい情報にも目を向けていることから
情報やさん的にお使いいただけたら嬉しいなと思っていて
(もちろんいくら勉強してもし足りないといつも思っています)
少なくとも先ほどあげた4つがお伺いできると
おススメできるものが絞れてきます。
まずは聴力です。
何度かブログでもご紹介したのですが
まずはご自身の耳の状態を教えていただきたいのです。
聴力によって補聴器から出る音の量や大きさが
合う・合わない が出てきます。
これがまたとっても大事なのですが
聴力は健康診断でやるような純音の聴力検査のみではなく、
(更に追加すると健康診断では基本的に2つの周波数しかチェックしないのであまり意味がありません)
語音弁別検査の結果も必要です。
これは『あ』とか『か』といった単音を聞き取り、
その正解率を見る検査なのですが
この検査の結果が余りにも低い数字の場合
補聴器をつけることに意味がなかったり
付けるにしても音を聞ければ十分なので
高価格な補聴器が必要ないと判断できたりする
大切な情報になります。
次に、補聴器を使うことを検討している方が
補聴器をつけてどうなりたいか、ということ。
会合や会議、お友達との集まりで
会話に入れないことが増えたから、
それを無くしたい、とか
会議で聞き漏れがないようにしたい、とか
お家でTVの音が聞こえればいい、とか。
人それぞれ、聞こえることで何がしたい?
という意見は異なります。
このご希望と、聴力によっては補聴器ではなく
もっと簡易な音の増幅器械で充分かもしれないからです。
またこの時にその方の生活状況や
生活の癖などもお伺いします。
細かく調整するのがお好きだったり
頻繁に足を運んでいただくのが難しくない方であれば
性能の高い補聴器は必要ないかもしれないですし
その反対で、ある程度補聴器任せに出来たほうが良い方には
ある程度の性能の高さが必要だったり。
お手元の器用さも、充電タイプを選ばれるか
空気電池タイプを選ばれるか、などの判断にとっても役立ちます。
3つ目にその方の音の好み。
これは実際に試していただくのが一番なのですが
(好みって本当にその方にしかわからないので)
強めにしっかり聞きたいのか
変化が優しい方がお好きなのか、という所を
教えていただきます。
当店では実際に3~4社の補聴器を
必ず最低でも1週間ずつお貸出しして使っていただきます。
実生活で使わなければ絶対解らないことが沢山あるので
試聴はとっても重要です。
そして最後、4つ目にご予算です。
補聴器は上の3つがまず大切です。
とはいえ、ご事情も人それぞれなので
どんなに3つの希望状況が高くていらしても
ご予算的にご希望と合わないことも
残念ながら起きてしまいます。
出来ればご予算ありきではなく
最初の3つ(聴力、希望の状態、音の好み)から
選んでいただけたら、とは思うのですが。。
日本も多くの諸外国のように、補聴器購入に
もう少し幅広い援助が増えると良いなと
本当に思います。
こんな背景があるので、今まで私から
進んでブログに最新の補聴器凄いんですよ!!
的なご紹介をしないで来たのですが
最近、おススメの補聴器って?
というご質問を頂くことが増えたので
この機会にと思い記事にしてみることにした次第です。
<最新の補聴器評価のご紹介>
補聴器のメーカーって何社位あるかご存じでしょうか。
私の把握しているのが大体50社位です。
(もしかするともっとあるかもしれないですが)
アメリカで、聴覚専門家のDrが開設している
Hearing Trackerというサイトでは
毎年補聴器メーカーとそのブランドを
系図にして公開しています。↓こちらです。
また、補聴器メーカーから新製品が出るたびに
その製品のレビューやユーザーの感想を掲載しています。
更に、1年に1度ですが、約500人の聴覚専門家に
アンケートをとって、それぞれの項目で
どのメーカーの製品が優れているか、という評価を発表しています。
これについてはコメント欄を読んでいただくと賛否両論あります。
ネガティブなものの代表が、
なぜユーザーに直接聞いたデータではないのか、
聴覚専門家はメーカーと結託しているんじゃないか、
という意見です。
これについては私の意見としては
最初にご紹介した4点があるという点もあるのかなと思います。
聴覚専門家が多くの補聴器を取扱い
全ての方にJINOと同じように比較試聴をしていること
が大前提で、意見を聞いていて欲しいところですが
実際には補聴器メーカーが持っている販売店の
(そのメーカーの補聴器以外販売していないことが多い)
聴覚専門家の意見も入ってしまっていることは否めません。
そういった点も考慮して、あくまでも参考意見として
見ていただく程度がちょうどよいのかな、とは思うので
リンクのみの掲載にしておきます。
翻訳をご希望の方がいらっしゃいましたら
個別にご連絡ください!
(ブログのコメントからでもJINOのemail:info@jino33.comにご連絡いただいても。)
なお、Hearing TrackerのCEOとは連絡を取っていて
翻訳してJINOのブログやHPでこちらの記事を掲載する事にも
許諾をもらっているのでご心配なく、です。
リンク先にも最新補聴器の機能が紹介されていますが、
最近の新しい補聴器の機能で
多くのユーザーの方が快適さを感じていらっしゃるのは
携帯電話のアプリでリモコン操作が出来る事かなと思います。
補聴器自体のAI的要素(ディーブラーニング機能)が
主要ブランドには搭載されているため
ユーザーの方の好みに合わせていきやすくなっているのですが
そこはご本人も知らぬ間に、気づいたら という変化なので
(めっちゃすごい機能なんですが)あんまり意識されず
ご自身で都度音の変化を感じられる機能の方が
便利さを感じていただきやすいのかもしれません。
ちなみに世界で流通している補聴器の約8割は
JINOでも取り扱っている世界6大メーカーのものです。
よく頂く質問に、日本製の補聴器はどうなのか?というものがありますが
日本のメーカーとの技術の差がどんどん開いてしまっている理由は
その流通量の差にもあると思っています。
ディープラーニングのような機能が一般的になり
ビックデータを元に、この聴力の方には
こういった音が好まれる傾向があるという事を
客観的にデータとして集めてそれを更に開発に反映できるか否か。
(しかも情報の量が世界中から集まるので膨大)
もちろんデータが全て、ではないのですが
さらに巨額の開発費を賄えるとなるとやはり
世界的なメーカーに技術開発で勝てなくなってしまいますよね。
日本人としては日本製のメーカーが
機能的に強くないという事実は残念な状況ではありますが、
これから先、聴覚の研究ももっともっと進んでくるのに合わせて
先行しているメーカーにない魅力を持った機器が
出てくる日がくるかもしれません。
最新の補聴器の機能は進化してはいますが
元の機能をご存じない方にとっては
今の機能が当たり前になるんだなあ~と思うと
この先の進化も楽しみです。
凄く細かい機能(例えばこんな環境でこんなことが出来る)とか
ブルートゥース接続してイヤホンみたいに使えるとか
翻訳機能がついてたり、転倒通知機能がついてたり
といったことはほとんどのメーカーで
最上位の器種かその1つ下のクラスの補聴器にしかついていないことが多い
=超高い ので、今回は全体評価のお話だけに留めました。
もしご希望があれば、それぞれのメーカーの最新機能について
解説もしますので、ご意見ご感想をコメントにいただけたら嬉しいです。
今回もお読みいただきありがとうございました!
LMH 郷司