日本橋で働く身体障がい者と共に、職場環境調査ツアーや座談会を開催しました

日本橋で働く身体障がい者と共に、職場環境調査ツアーや座談会を開催しました

「人と街の好循環」を目指す、日本橋のコミュニティ

三井不動産株式会社
2024年11月18日 13時59分

・「人と街の好循環」を目指し、日本橋で働く身体障がい者(視覚障がい、聴覚障がい、車椅子ユーザー)とともに職場環境調査ツアーを実施した。
・企業の課題感が起点となり、職場環境調査ツアーを先行実施した企業や日本橋で働く身体障がい者との知見共有や情報交換する場や機会として、座談会を企画・実施した。
・日本橋で働く車椅子ユーザーから日本橋における不便な点や快適な点、ツアーや座談会に参加した感想等をヒアリングした。

 一般社団法人日本橋室町エリアマネジメント(以下、「日本橋室町エリアマネジメント」)は、誰もが働きやすい街づくりを目指し、日本橋で働く身体障がい者や企業の人事・総務担当者と共に、職場環境調査ツアー(今年2月、3月に1回ずつ)や座談会(9月)を実施してきました。活動を通して、日本橋において同じ思いや課題感をもった者同士のつながりが生まれ、コミュニティが形成されています。

職場環境調査ツアー
職場環境調査ツアーの参加者


◆実施背景

 日本橋室町エリアマネジメントは、「街の魅力向上」と共に、「各人の自己実現」を目指しています。例えば、ビジネスイベントを通じて、新たな仲間との出会いや挑戦できる機会を設けるなど、誰もが働きがいと働きやすさを感じれる街づくりを推進してきました。

 昨今、経済社会では、人の能力・意欲を重視する「人的資本経営」が叫ばれ、その一環として、多様な個人を総動員して企業価値を高める「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」の重要性は高まっています。障がい者雇用推進法では、法定雇用率が年々引き上げられるなど、D&Iの深化を求める気運が高まっています。しかし、行政や公共交通機関に比べてオフィスをはじめ職場空間・環境の整備は遅れ、D&I観点での街づくりや街一体となった取組みが必要となっています。

 このような背景から、街で働く障がい当事者と共に、オフィスや街の利便性を検証する職場環境調査ツアーの企画や、誰もが働きやすい街になるための知識や思いを共有する場と機会を設けました。

職場環境調査ツアー
職場環境調査ツアー


◆活動実績

 多岐にわたるD&Iのテーマの中で、今年は身体障害に着目し、日本橋で働く身体障がい者と共に、主に2つの活動を実施してきました。その際、国立大学で唯一、聴覚・視覚障がい者のための大学である筑波技術大学の山脇教授・梅本准教授に講師・監修者として参画いただきました。

1) 職場環境調査ツアー

職場環境調査ツアー
職場環境調査ツアー

 ツアーでは、企業の人事・総務部が、障がい当事者の追体験をすることを目的に、聴覚障がい・視覚障がい・車椅子ユーザーと、健常者がペアになりオフィスや街を歩くプログラムを企画・実施しました。各シーンで感じた問題点をグループで深堀、議論することで、普段なかなか気づけない/言えない課題・解決案を共有しました。さらに、オフィスや街で誰もが心地よく働ける設えや運用ルール、マナーなど、様々な観点において理想の状態やそれを実現するために今すぐできるアクションについて話し合いました。

通勤路に当たる公共空間の改善検討イメージ図


 後日、監修者を務めた両講師から、建築施工レベルから機器・什器の交換・設置レベル、さらには社内啓発や業務改善レベルまでの、計21のアイデアが提起されました。また、通勤路に当たる公共空間の改善検討においては、オフィス街では未だ少ない「車椅子ユーザーも健常者も自走で利用可能」な、まさにユニバーサルなスロープが提案され、今後の議論の敲き台が整いました。

 ツアー参加者からは「実際に障がい者の方と行動することで、普段気づくことができないバリアを意識するようになった」「課題に気づくことが出来ていない事実を正しく認識できた」という声が聞かれました。

成果
 └ツアーを実施した企業はオフィス改修を実行中(今後1年半かけて数カ所を改修予定)


2)座談会

座談会
座談会


 日本橋の企業から、障がい者雇用やその環境整備について、どこから着手すればいいのか分からないという課題感が起点となり、職場環境調査ツアーを先行実施した企業や日本橋で働く障がい当事者と知見共有や情報交換する場や機会として、座談会を企画しました。当日は、日本橋の企業5社(主に、人事・総務担当者)が集まり、事例共有および悩み相談をしました。ツアー監修者の筑波技術大学・梅本准教授や、日本橋で働く障がい当事者2名も参加したことで、実体験に基づいた議論が展開され、障がい者との対話の重要性が各人から叫ばれました。

 座談会の参加者からは、「障がい者が働きやすいオフィス内の工夫は、健常者でも体格など事情がある人に対しても有効な手段となりえることが分かった(例えば昇降デスクは車いす利用者だけではなく、腰が悪く立って仕事をしたい人にも有効)」といった設えに関する気づきや、「障がい者も健常者も関係なく受け入れる気持ちや雰囲気の醸成、対話を通じた相互理解が必要だと分かった。相互理解が進めば誰もが働きやすい職場に近づく。」といった各人の意識や相互理解に関する気づきの声も聞かれました。

 また、今後も座談会や事例紹介の機会を定期開催して欲しいという意見もありました。

成果
 └座談会での話を受けて、職場環境調査ツアーの年度内実施検討
 └同じ課題感を持った日本橋企業担当者の座談会定期開催の検討開始


◆日本橋で働く障がい当事者の声

 上記活動にご参加いただいた日本橋で働く車椅子ユーザーに、以下4つの観点でご意見を伺いました。

1)日本橋で感じた不便・不満

「小さな段差などに、ひっかかって転倒しそうになった。」

「地下鉄駅の改札を出てからオフィスへの通勤経路内で、部分的にエレベータが無い、ビルの入り口の(階段ではない)段差で入れない、途中の歩道が大きく傾斜しているなどの不自由さが一部に残っている。」

「商業施設内の多機能トイレにおいて、使用後誤って個室内の「閉」ボタンを押されたことで空室にも関わらず利用できなかった。また、個室内のごみ箱の配置が悪く、初めて利用される視覚障がい者がぶつかりかねない。利用方法の周知などのソフト面に課題がある。」

2)日本橋で感じた便利・快適

「日本を代表する企業も多く、ワーカーの皆さまの意識もとても高いエリアだと思う。理由なき偏見や差別的な対応を日本橋地区では経験したことがない。設備対応が追い付かない場合も、何とか可能な範囲で、いわゆる合理的配慮を提供しようとしていただけることがほとんど。」

「開きドアで手動の場合の開閉が一人では難しい。でも、通りかかった方がお手伝いしてくださるので、困ったことはありません。」

3)職場環境調査ツアーや座談会に参加してみての感想・気づき

「社外の障がい当事者の方やご専門の先生方が率直な意見を寄せてくださること、それを社内で共有していくことが、担当だけでなく経営層やオフィスワーカー全体の意識の底上げにつながるように思う。何かあれば相談でき、且つ参加が負担にならない程度の良い意味でゆるいネットワークが今後形成されることを期待します。」

「他社の取り組みを見せていただけることは大変参考になった。日本橋エリアでより健常者が障がい者や妊婦さん、病気を持っている人達がいるということを知ってもらい、そこで何ができるか考える機会があったらいいと思う。障害を持つ人からの強要ではなく、それぞれの会社で物理的(金額的)に可能なことを取り入れられればいい。取締役など会社の方向性を決める人にぜひ見てほしい。」

4)今後の活動に期待すること、アイデア等

「建物や道路、室内設備を改装するとき、地域や企業でお祭りやイベントを開催するとき、(障がい者等の)当事者だけに特段の努力を求めない街を作り、それを『日本橋標準』として次の世代に繋いでいく、そのために何ができるかということを考えたい。将来的には公開可能な事例集の作成などを行う有志のネットワークもあってもよい。」

「障がい者だからと遠慮することもなく、わたしも何か役に立てることがあれば、という思いでいる。意見を伝えられる場があれば、そこに関わる全員でできることを探り『合理的配慮』ができるのではないかと思う。」

◆専門家の声

活動当初から、講師・監修者として参画いただく
筑波技術大学・梅本舞子准教授

筑波技術大学・梅本舞子准教授


コメント:
「障がい者の雇用をはじめとしたD&Iの進化が求められていますが、その環境整備という意味では、バリアフリー法など制度面でのコントロール、また学術研究分野の蓄積も道半ばではないでしょうか。そのような中、オフィス環境UDの深化を目的に、当事者ガイドと共に過ごし生活体験を共有することを重視した一連の企画には、大きな期待を寄せています。なぜならば、当事者が身近な存在になることが、何よりの環境改善の推進力になることを実感しているからです。

私は普段、聴覚や視覚障害のある学生と過ごしていますが、自分自身に見えていないバリアがいかに多いのかに気付かされる日々です。そのバリアは、空間から仕組み・制度まで多岐に渡りますが、これに気づき、そして改善を図ろうと活動できるのは、彼らが身近な存在であるからに他なりません。

オフィスのUDを深化させるためには、研究者らが外野から提案するのではなく、オフィスという現場で当事者と共に試行錯誤する必要があります。どんなに空間や制度が素晴らしくても、それを使いこなすのは人ですし、いずれ陳腐化する空間や制度を変えるのもまた、人だからです。そのため、この活動が継続すること、そしてオフィスだけでなく生活の場として街全体へ広がっていくことを期待します。」

略歴:
国立大学法人筑波技術大学 准教授 博士(工学) 1級建築士
聴覚・視覚障がい者のための大学にて、建築学の教育に携わる。子育て、障がい者、ケアラー、空き家等をキーワードとする住環境計画に係る研究に取り組みつつ、まちづくりにおいてはバリアフリーやユニバーサルデザインなど、自治体と連携した活動を進める。つくば市バリアフリーマスタープラン策定協議会副会長ほか


◆一般社団法人日本橋室町エリアマネジメントの目指している街づくりについて

 当法人は、日本橋の事業者や行政と一体となって、「人と街の好循環」をテーマとし、「街の魅力向上」と共に「各人の自己実現」を目指した活動を行っています。
 「人と街の好循環」とは、街の賑わいを発端に人々が交流し、そこからアイデア・挑戦機会が生まれ、その学びを次の世代に伝え、それらを街の魅力として発信することでさらに賑わいが生まれていく、といった循環型街づくりの考え方です。
 2024年10月に設立10周年を迎えましたが、今後も引き続き、「人と街の好循環」を実現するため、場と機会を提供することで貢献していきます。
(一般社団法人日本橋室町エリアマネジメントHP: https://muromachi-area.jp/

設立10周年を機に策定した、日本橋室町エリアマネジメントの「循環型街づくり」モデル

設立10周年を機に策定した、日本橋室町エリアマネジメントの「循環型街づくり」モデル


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