普及促進 支える側も

普及促進 支える側も

4月、神戸市西区の県立障害者スポーツ交流館にバレーボールを楽しむ人たちの姿があった。

聴覚障害者と健聴者の交流と相互理解を目的に、血液型で分けたチームで楽しむ大会。スパイクが決まると、聴覚障害のある男性が親指を立てて「いいね」を表現し、同じチームの聴覚障害者と健聴者が喜びを分かち合った。理学療法士で交流館体育指導員の清水真澄さん(41)は「手話ができなくても、身ぶりや口をゆっくり動かし、工夫してコミュニケーションを取ることで、一緒に楽しめる」と、デフバレー交流会の魅力を語る。

清水さんとパラスポーツの出会いは、理学療法士として県立総合リハビリテーションセンター(神戸市西区)で働き出した22歳の頃。リハビリを担当した交通事故で膝から下を失った同世代の女性に誘われ、座った状態のままプレーするシッティングバレーボールを体験した。

「 下腿かたい を切断してもバレーボールができ、夢中になってプレーする姿がかっこよかった。やってみると、本当に面白かった」と思うと同時に、「世界を見て自己研さんし、支え手としての技量を高めたい」と感じた。志願してシッティングバレー女子日本代表チームのトレーナーとなり、パラリンピックロンドン大会に同行。東京大会はメディカルスタッフとして参加した。各地を訪れて感じたのは、環境整備がまちまちなこと。「普及に大切なのは、関心を高め、支え手となる人を育てること」だと気づいた。

結婚を機に、2009年に南あわじ市に移り住み、現在はユニバーサルスポーツの普及活動などに取り組むNPO法人の副理事長を務める。昨夏に続き、この夏も障害の有無にかかわらず、海水浴を楽しめる「ユニバーサルビーチ」を阿万海岸海水浴場で企画する。ほかにも、椅子に座って卓球台を囲み、音の鳴る球を転がして打ち合う卓球バレーの交流会を開いている。

県は昨年度、県ゆかりのアスリートらがスポーツを活用した地域活性化策などを検討する委員会を開き、提案書をまとめた。このうち、ユニバーサルスポーツ分科会報告には、「本県における障害者スポーツ振興を通じた共生社会の実現、障害者の社会参画の促進に向けて、より一層のパラスポーツの普及促進が必要である」と記されている。

その契機として期待されるのが、神戸市で開催される世界パラ陸上競技選手権大会。「パラアスリートの可能性とともに、支える側の熱量も感じたい」と清水さん。大会開幕を心待ちにしている。(岡信雄、おわり)

<ユニバーサルスポーツ>  障害の有無や年齢、性別などにかかわらず、誰でも楽しめるスポーツの意味で使われることが多い。「ボッチャ」や「卓球バレー」が代表的な競技。

リンク先は讀賣新聞オンラインというサイトの記事になります。
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