2025年に日本で初めて行われる聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」の開幕まで15日であと2年。
卓球女子で金メダルが期待される亀沢理穂(33)(住友電設)に意気込みを、大会運営委員会の久松 三二みつじ 委員長(69)(全日本ろうあ連盟事務局長)に準備状況を聞いた。(荒井秀一)
2年後に東京開催のデフリンピック、エンブレム決定…手と桜の花びらモチーフ
悲願の「金」 母国で…卓球 亀沢理穂 33(住友電設)
「もうあと2年しかないという感じ。
日本という母国で行われるので、絶対に金メダルをとりたいという思いが時間がたつごとに強くなっている」。
たかぶる気持ちを抑えきれない。
難聴がわかったのは生後10か月の時。
花火大会に行った際、大きな音がする中、すやすやと眠っている様子に親族の一人が異変を感じ、病院の検査で判明した。
両親の影響で小学生で卓球を始め、中学1年の時にデフリンピック金メダリストの講演会に参加し、大会の存在を知った。
「出てみたいと思った。それから本格的に打ち込むようになった」。
少女の心に夢が芽生えた。
デフリンピックでは競技中、補聴器をつけない。
「頼りになるのは目。ボーッとしているとぼやけるので、集中力を保つのが一番大変」。
そんな音のない世界の卓球で抜群の集中力を発揮し、実績を積み上げてきた。デフリンピックは4度出場し、通算8個のメダルを獲得。
ただ金メダルだけ手にできていない。
今年7月に台北市で行われた世界ろう者選手権では、女子団体と女子ダブルスで金、女子シングルスでも銀メダル。
日本のエースにとって悲願のデフリンピック金メダルは、間違いなく手の届く位置にある。
明るい性格で、SNSでの発信や講演会で、まだ注目度の低いデフリンピックの知名度アップに努めている。
「東京大会の開催で知名度を上げ、デフスポーツの魅力を知ってもらいたい。手話の大切さも広めたい」。
デフアスリートとして、そして大会の「伝道師」として日々、戦っている。
手と桜がモチーフ
エンブレムは、大会を通じて人々がつながる「輪」をテーマに、手話に使う手と桜の花びらをモチーフにデザインされた。
考案したのは筑波技術大4年の多田伊吹さん。
聴覚・視覚障害者が学ぶ同大の学生からアイデアを募り、37作品の応募があった。
手作りの大会 モデル示す…大会運営委 久松委員長
東京大会は国際ろう者スポーツ委員会(ICSD)が主催し、競技の運営などは東京都の政策連携団体の「都スポーツ文化事業団」が担当。
ICSDと日本側の調整を運営委が担う。
運営委の久松委員長は「4年ぐらいかけて招致活動し、(昨年9月の開催決定を経て)ようやく2年前という日を迎えることができた。感慨深い」と話す。
東京五輪・パラリンピックを巡る談合事件を受け、大規模大会はガバナンス(統治)について厳しい目が向けられる。
東京デフもコンプライアンスに関わる制度作りに「一番エネルギーをかけている」という。
「デフスポーツ・サポーター制度」を設け、企業1口10万円、個人1口3000円という寄付を募って運営資金の一部をまかなう。
「お金をかけない、手作りの大会というスポーツ界のモデルを示せたら」と強調する。
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