市川衛 医療の「翻訳家」
8/12(月) 8:35
(写真:アフロ)
先週、世界的な医学雑誌の委員会が、認知症のリスク要因に関する最近の報告書を発表しました。新たに加わった要因は「視力障害」と「高コレステロール」。すでに指摘されているものを含めた14個の要因に対策をとると、認知症の最大45%を予防できる可能性があるといいます。
実は14の要因にはそれぞれ、特に気を付けるべき「時期」があるんだそうです。中年層が気を付けるべきなのは「難聴」のほかに…?
ココがポイント
▼英医学誌ランセットが「認知症のリスク要因」に関する報告書をアップデート。新たに「視力障害」「高コレステロール」が加わった
・認知症発症の最大45%を防ぐ!英・医学誌がリスク要因の14項目を発表(CBC Magazine・2024年8月5日)
▼他の要因は、低い教育水準、頭部外傷、運動不足、喫煙、過度の飲酒、高血圧、肥満、糖尿病、聴力障害、うつ、社会的孤立、大気汚染
・認知症、45%予防・遅延可能 英医学誌、14のリスク提示(東京新聞・2024年8月1日)
▼高齢期に白内障などによる視力の低下を放置すると、認知症のリスクが高まる(治療で改善しうる)とする証拠が増えている
・Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission(The Lancet Commissions| Volume 404, ISSUE 10452, P572-628, August 10, 2024)
▼【図】中年期に気を付けるべきは「難聴」「高コレステロール」「うつ」「頭部外傷」「運動不足」「糖尿病」「喫煙」など
・Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission(The Lancet Commissions| Volume 404, ISSUE 10452, P572-628, August 10, 2024)
エキスパートの補足・見解
ランセットの委員会による認知症リスクの報告は、2017年に出されたあと定期的にアップデートされています。今回は「視力障害」と「高コレステロール」が新たなリスクとされました。
視力障害がなぜ、認知症と関係?という疑問について、報告書では、視力低下が脳に何らかの影響を与える可能性や、背景に糖尿病がある(視力低下の原因になると同時に認知症のリスクを高める)可能性などを指摘しています。視力検査を定期的に受け、低下していたら適切な治療を受けることが予防に役立つかもしれません。
ちなみに報告書はライフステージごとに、気を付けるとより効果が高そうな要因を提案しています。
例えば中年期であれば、最も対策のコスパがよさそうなのは「難聴(7%)」と「高コレステロール(7%)」。50前後であっても、健康診断で聴力の低下を指摘されたりしたら、医師と相談のうえ、耳にやさしい生活(イヤホンの音量に気を付けるなど)を心がけたりしてもいいかもしれません。
これらの要因は、それに気を付けることで、生活の質を高めたり、他の病気を防げたりする効果も期待できます。認知症予防「にも」役立つのであれば、気にしたほうがトクと言えるかもしれませんね。
市川衛
医療の「翻訳家」
(いちかわ・まもる)医療の「翻訳家」/READYFOR(株)基金開発・公共政策責任者/(社)メディカルジャーナリズム勉強会代表/広島大学医学部客員准教授。00年東京大学医学部卒業後、NHK入局。医療・福祉・健康分野をメインに世界各地で取材を行う。16年スタンフォード大学客員研究員。19年Yahoo!ニュース個人オーサーアワード特別賞。21年よりREADYFOR(株)で新型コロナ対策・社会貢献活動の支援などに関わる。主な作品としてNHKスペシャル「睡眠負債が危ない」「医療ビッグデータ」(テレビ番組)、「教養としての健康情報」(書籍)など。
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