手話の劇を披露する福岡の劇団。本番へ向かう8歳の女の子を追いかけました。
■聞こえる人と聞こえない人の劇団
鈴木逢花さん
「この前はお父さんが全く目が見えない人と会ったことがあるっていったから、私はあんまり会わないからなんかいいなあって思う」
小学2年生の鈴木逢花さん。自分の知らない世界を知るのが楽しいと話します。逢花さんの世界を広げるきっかけとなったのが手話を使った劇を披露する福岡ろう劇団博多です。一緒に作り上げるメンバーは耳の聞こえる人、聞こえない人 さまざま。約1カ月後が本番です。
逢花さんは耳が聞こえます。
同級生
「保育園のころずっと同じクラスだった」
「優しい。頭良い」
「鈴木さんは誰とでも友達になれる」
昼休みには、6年生のお別れ会で披露する木琴を練習していました。
鈴木逢花さん
「楽しいから(木琴をしてる)。(Q.新しいことやるのが好きなんだね)学校でやったことないことをやる」
好奇心旺盛な逢花さんですが以前、こんなことを話していました。
「聞こえる人と話をするのが難しい」
父・鈴木玲雄さん
「手話で話す環境があったから聞こえる人に話をするのが難しいっていう珍しいことが起こっている」
逢花さんのお父さん、玲雄さんは難聴者です。母の和恵さんは耳が聞こえず家族の会話は手話が中心。家では手話、学校では言葉を使って会話をしています。「聞こえる世界」と「聞こえない世界」を自由自在に行き来しているのです。
先ほどのろう劇団博多に入ったきっかけは父・玲雄さんの存在。劇団長を務めています。
父・玲雄さん
「聞こえる世界にいる時間が長いと私や妻とコミュニケーションがなかなかできなくなってしまう。なるべく偏らないように、私たちがいる世界、聞こえない世界っていうのはこんな感じなんだよっていうことで、劇の稽古にも連れて行っている」
玲雄さんの願い通り今では逢花さんが「2つの世界」の架け橋に。劇団での活動が親子にとって欠かせないものとなっています。
■耳の聞こえない人も音楽にあわせて
新たな劇の本番を迎えました。2月12日、会場には長蛇の列ができていました。
福岡ろう劇団博多の演目「オズの国へ」は「オズの魔法使い」をモチーフにした物語です。ろう劇団博多のメンバーは耳の聞こえる人、聞こえない人様々です。32年の歴史があるこの劇団。テレビの字幕放送が普及していない時期からろう者の文化として発展してきました。
ただ、今回こだわったのは「聞こえる人」も「聞こえない人」も皆が同じように楽しめる劇です。そんな思いで今回、初めて歌に合わせて劇をつくりました。
楽しく踊っていますがここに至るまでには大きな苦労が…
福岡ろう劇団博多 鈴木玲雄さん
「聞こえない団員は音楽とは全く無縁の世界。音楽に対して抵抗がある」
一方で耳の聞こえる団員にとっても難しい挑戦でした。
小学4年生 馬渡亜依音さん
「最初、歌やピアノに合わせてって言われたけれど、(耳の聞こえない劇団員の)雫華ちゃんとずれてしまうのが気になったりする。手話に合わせてって言われてどっちに合わせればいいか(悩んだ)」
そこで辿り着いた解決策の1つが、歌い始めの前にジャンプをすることでした。
福岡ろう劇団博多 吉田雫華さん
「(耳が聞こえないので)学校での歌の時はタイミングが合わない、タイミングが分からなくて楽しくないって思うことがあった。劇と歌と一緒に合わせることを知って、初めてやってみてすごく気持ちが楽しいなって思った」
劇団員の思いは観客にも伝わったようです。
観客
「歌にろう者が合わせるのは難しいことだからすごいと思った」
「手話を見たことはあったけど劇と一緒にやったのは見たことなかったからすごかった」
劇団長の娘で小学2年生の逢花さん。その友達も劇を見に来ていました。
友達
「劇を見てとてもかわいかった。」
逢花さん
「劇ってすごく難しいところもあるけど楽しいんだよみたいなところをわかってほしい」
今回、劇団は地元の合唱団とコラボしました。劇団の活動で新しい場所に行き、いろいろな人に会えるのが逢花さんの大きな楽しみです。
逢花さん
「新しい友達を増やした方がその子の友達と友達になれて1人でも友達を作ったらどんどん友達が作れて楽しい」
劇団、そして逢花さんの挑戦はまだ始まったばかりです。
リンク先はテレQというサイトの記事になります。