【その②】難聴

【その②】難聴

『難聴

話しことばをきくための重要なきこえの範囲
人がきくことができる音の高さ(周波数)の範囲20~20,000 Hzの内、話しことばをきくために重要となるきこえの範囲は500~3,000 Hzです。

聴力レベル
音がどれくらいきこえているかは、耳鼻咽喉科で行われる聴力検査を行い数値化します。 

基本となる検査は「純音聴力検査」で、オージオメータという機械を用いてどれくらい小さな音がきき取れるかを調べます。

気導受話器(ヘッドホン)や骨導受話器を使い、機械からこえてくる「ピッピッピッ」というような高い音や、「ブッブッブッ」というような低い音が、かすかにでもきこえたらボタンを押します。

どの周波数の音がどの大きさできこえたかを記したグラフを「オージオグラム」と呼びます。

横軸が周波数で、聴力検査では125 Hzから8,000 Hzまでを測定します。
縦軸が聴力レベルを表し、0 dBが健聴な耳にきこえる一番小さな音の平均値とする音量表現単位で、下に向かい数字が大きくなるほど大きな音になります。

難聴の聴力レベル
検査で得られた500 Hz、1,000 Hz、2,000 Hzの値から算出した平均聴力レベルを参考にして、不便さを推測します。

上記のオージオグラムを例にすると、平均聴力レベルは右耳が57.5 dB(=(50+60x2+60)/4)、左耳が82.5 dB(=(80+80x2+90/4)となります。

難聴の聴力レベルは次の「4段階」に分けられ、日常生活の不便さはレベルによって異なります。

軽度難聴
平均聴力レベル:25 dB以上40 dB未満
・小さな声や騒音下での会話の聞き間違いや聞き取りの困難を自覚する。
・会議などでの聞き取り改善目的では補聴器の適応となることもある。

中等度難聴
平均聴力レベル:40 dB以上70 dB未満
・普通の大きさの声の会話の聞き間違いや聞き取り困難を自覚する。
・補聴器の良い適応となる。

高度難聴
平均聴力レベル:70 dB以上90 dB未満
・非常に大きい声か補聴器を用いないと会話が聞こえない。
・聞こえても聞き取りには限界がある。

重度難聴
平均聴力レベル:90 dB以上
・補聴器でも、聞き取れないことが多い。
・人工内耳の装用が考慮される。

(日本聴覚医学会2014より)

 

難聴の種類

伝音難聴


伝音系の器官に問題があることできこえにくくなるのが「伝音難聴」です。

原因① 外耳道炎、急性中耳炎、滲出性中耳炎など
一時的な症状で、薬の投薬などで改善することが多いです。

原因② 滲出性中耳炎、鼓膜穿孔(慢性中耳炎)、耳小骨外傷、耳硬化症など
手術によって「きこえ」が改善することもあります。

原因③ 耳垢が外耳道につまる耳垢栓塞
高齢者が「急にきこえなくなった」ときの最も多い原因で、耳垢を除去するとただちに改善します。

たとえ原因疾患の治療が難しい場合でも、「きこえ」の改善をあきらめる必要はありません。
補聴器を装用して適切な音を内耳に届けられれば、問題なくきこえることも多いので、耳鼻咽喉科を受診しましょう。

感音難聴
感音系器官の障害によって「きこえ」が低下するのが「感音難聴」です。

蝸牛内の有毛細胞の数が減少すると、音の情報をうまく脳に送ることができません。
他の部位の病変を含め、感音難聴では、音信号の正しい伝達が妨げられているため、音を大きくしても正常な「きこえ」とはなりません。

感音難聴には急性と慢性があります。
急性の感音難聴(突発性難聴、音響性外傷など)は早期の薬物治療等で改善するケースもあります。
慢性の感音難聴(加齢性難聴、騒音性難聴、先天性難聴など)は感音難聴のほとんどを占め、現在のところ治療で「きこえ」を取り戻すのは困難ですが、補聴器で「きこえ」を補うことは可能です。

混合性難聴
伝音難聴と感音難聴の2つが合併した難聴が混合性難聴です。
伝音難聴と感音難聴のどちらの症状が強いかは個人差があるため、症状に応じて各種治療や補聴器などを使用して対処します。

 

市村恵一(いちむら・けいいち)先生
東京大学医学部卒。耳鼻咽喉科医師。 浜松医科大学講師、東京都立府中病院医長、東京大学医学部講師、助教授、自治医科大学教授、副学長を歴任。 石橋総合病院院長を経て、現職。現在自治医科大学名誉教授、評議員。耳鼻咽喉科専門医、気管食道科専門医。 日本小児耳鼻咽喉科学会理事長、日本鼻科学会常任理事など多くの学会の要職を歴任。 難病のオスラー病鼻出血の手術治療の第一人者。補聴器適合判定医、 補聴器相談医の資格を活かして、最近は高齢者の補聴診療に携り、市村順子と「イチムラデザイン」を考案、実行。

 

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