過去に公的予防接種を受ける機会のなかった44~61歳の男性を対象にした風疹の無料抗体検査の受診率が3割と低迷している。妊婦を通じて胎児に感染し、生まれた赤ちゃんに障害が出るのを防ぐため、国は検査やワクチン接種を無料としているが、その期限はあと1年あまり。専門家は「このままではつらい思いをする妊婦や赤ちゃんが出てしまう」と受診を呼びかける。
風疹のウイルスに感染すると、主に発熱や発疹、リンパ節の腫れの症状が出たり、成人が脳炎で意識障害となったりすることがある。せきなどの飛沫(ひまつ)で感染し、免疫がないと、患者1人から5~7人にうつす強い感染力がある。妊娠20週ごろまでの妊婦が感染すると、おなかの赤ちゃんが白内障や難聴、心臓病などの先天性風疹症候群となることがある。
ワクチンで予防でき、1977年から定期接種となり、現在は1歳と年長児相当に計2回うつことになっている。しかし、62~78年度生まれの44~61歳の男性は、制度変更により公的な予防接種の機会がなく、抗体保有率が低い。
風疹は数年おきに流行を繰り返し、2013年は全国で1万4344人が感染し、この流行で先天性風疹症候群の赤ちゃんが45人報告された。18~19年は計5239人が感染した。いずれも、40~50代の男性が流行の中心になった。
無症状や軽症も多く、職場や家庭で妊婦が感染することがあるため、政府は19年度から、この年代の男性は原則無料で抗体検査やワクチン接種を受けられるようにした。だが、周知不足や新型コロナの流行による受診控えの影響もあり、受診率は低迷、期限は24年度まで延長された。それでも昨年11月までに検査を受けたのは、対象の約1537万人の3割の約471万人、予防接種は約102万人にとどまる。
風疹に詳しい神奈川県衛生研究所の多屋馨子(けいこ)所長は「自分が重症化するリスクや、気づかないうちに妊婦や家族、同僚に感染させてしまう可能性がある。このまま対策が進まなければ、過去と同じように免疫を持たない男性の間で流行し、つらい思いをする妊婦や赤ちゃんが出てしまう。今すぐ検査を受けてほしい」と話す。
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