耳には音を聞き取る以外に、体の平衡感覚を保つ働きもあります。
ストレスや過労が原因でこの両方に支障が生じ、立っていられないようなめまいと難聴が起こる病気が「メニエール病」です。
似た症状の別の病気と見分けるためにも、耳鼻咽喉科やめまいの専門外来での早期診断が重要です。(藤沢一紀)
吐き気や嘔吐も
メニエール病は一般的に、耳鳴りや耳の 閉塞へいそく 感のほか、ぐるぐると目が回るようなめまいを繰り返します。
めまいは突然起き、しばらくすると治まります。
めまいの発作は10分程度から数時間で、吐き気や 嘔吐おうと を伴うことがあります。
頻度は週に数回程度から、年に数回程度までと個人差があります。
初期のめまいは寝ているしかできないほど重いケースが多いです。
繰り返すうちに症状が軽くなる人もいますが、慢性期になると、発作が出ていない時もふらついたり、耳鳴りや難聴が出たりします。
再発しやすいのが特徴で、再発を繰り返すうちに進行し、聴力の低下を招きます。
初めは低い音が聞こえにくくなり、慢性化すると高い音も聞き取りづらくなります。
耳の奥にある内耳には、〈1〉音を電気信号に変換して脳に伝える〈2〉体の平衡感覚を保つ――という二つの機能があります。
メニエール病は、ストレスや過労などの原因で内耳の中のリンパ液が増えすぎて水ぶくれができ、内耳の機能に支障が生じることで起きます。国内の患者数は5万人前後と推計されています。
早期の診断必要
似た病気に突発性難聴がありますが、めまいや難聴を繰り返すことはありません。
この二つの病気を見分けるには、早期に正確な診断を行うことが必要です。
診断では、聴力検査のほか、眼球の運動検査、平衡機能検査などを行います。
磁気共鳴画像(MRI)検査で内耳の腫れを確認することもあります。
治療はまず、体への負担が小さい方法を試みます。
十分な睡眠や適度な有酸素運動を心掛け、生活習慣を見直します。
日頃からストレスや疲れがたまりにくい生活をすることは予防の面からも大切です。
また、めまいや内耳の腫れを抑えるため、抗めまい薬や利尿剤などを投与します。
それでも改善しない場合の治療法として2018年9月に公的医療保険の対象になった「中耳加圧療法」があります。
耳鼻咽喉科やめまいの専門医を受診した上で、専用の医療機器を借りて自宅で行います。
イヤホンで強弱のついた空気圧をかけ、内耳にたまったリンパ液を押し出します。
1日2回、3分間ほどで済みます。
機器の製造会社によると、全国の約300の医療機関でこの治療を受けられます。
こうした治療を行っても進行する場合、手術を行います。
たまったリンパ液を外に排出する通路を作ったり、めまいを感じる内耳の神経を破壊したりします。
神戸大病院耳鼻咽喉・頭頸部外科医師の横井純さんは「メニエール病を発症する高齢者は近年、増加傾向にあります。気になる症状がある人は日本めまい平衡医学会のウェブサイトにあるめまい相談医のリストを見てください」と話している。
リンク先はYomiDr.というサイトの記事になります。