米軍嘉手納基地や普天間飛行場周辺で、聴覚障害を引き起こす100デシベルを超える米軍機などの騒音が「常態化」している。
沖縄県の照屋義実副知事は14日、在日米軍沖縄事務所長や沖縄防衛局など日米関係機関に騒音軽減を求めた。
各機関は「懸念は理解している」とするが、騒音が激しい外来機の飛来が依然として続いている。(中部報道部・砂川孫優)
嘉手納基地では、常駐するF15戦闘機の退役に伴い、昨年11月からF22ステルス戦闘機とF16戦闘機が暫定配備された。
今年3月からは、この2機に代わり、F35Aステルス戦闘機とF15E戦闘機「ストライクイーグル」が配備された。
さらに外来機の飛来も加わり、早朝や夜間問わず、訓練で離着陸を繰り返している。
県によると、2022年度の嘉手納基地周辺の1日当たりの航空機騒音発生回数は嘉手納町屋良が66・4回で最多、最大騒音値は北谷町砂辺で117・9デシベルだった。
航空機騒音規制措置(騒音防止協定)で飛行を制限する夜10時~翌朝6時の騒音発生回数は屋良が最も多く、1カ月当たり133・9回に上る。
普天間飛行場周辺では、宜野湾市上大謝名が最多の34・2回、最大騒音値は118・8デシベルだった。
同市の上大謝名と野嵩ではほぼ毎年、高い騒音値で推移している。
1日当たりの騒音発生時間を示す「騒音継続累積時間」は嘉手納町嘉手納の24分24秒が最長で、北谷町宮城が16分22秒、沖縄市知花は13分7秒。住民は騒音による健康被害の悪化を懸念する。
■85デシベル以上で難聴
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会によると「騒音性難聴」は一般的に85デシベル以上を長時間、長期間聞き続けることが原因だ。
例として、電車通過時のガード下など100デシベルの音を継続して聞いた場合、1日当たりの許容基準は15分。
自動車のクラクションなど110デシベルは28秒。大きな音になればなるほど、短時間でも難聴になるリスクが高まる。
米軍は常駐するF15を昨年12月から約2年かけて順次、退役させる計画だ。
ただ、嘉手納基地の戦力を維持するため、各地の米空軍基地から既存の戦闘機を巡回させて配備する予定で、現状が少なくとも残り約1年3カ月は続く見通しだ。
米軍はこれまで、F15の後継機について「巡回配備ではなく、新しく造る」と言及。
米で製造が再開される最新鋭のF15EXとみられるが、現時点では決まっていないという。
■対策待ったなし
中国情勢をにらみ、暫定配備機を「抑止力の維持」とする米軍。
その陰で、日米安保の下、住民が米軍機の騒音に悩まされ続けている現状がある。
県の騒音軽減の要請に在日米軍沖縄事務所は「負担軽減に努力したい」と述べるだけ。
住民は「実効性の担保を」と求めている。
普天間飛行場には戦闘機が相次いで飛来し、米軍機の場周経路の逸脱も目立つ。
各地で頻発する騒音の根拠を集積するため、新たな測定局の増設を求める声も上がっている。
県は「現状のまま」として増設しない考えだが、騒音は拡大の一途で、対策は待ったなしだ。
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