聴覚障害がある山形市の画家舟越俊雄さん(73)の初の個展「空港への想(おも)い」が山形県東根市の山形空港で開かれている。
「耳が聞こえないもどかしさ、寂しさを解き放ってくれる」と、幼い頃から憧れの飛行機をモチーフにした油彩画が並ぶ。
聞こえぬ寂しさ「飛行機が解き放ってくれた」
空港2階の多目的ルームに27点を展示。駐機場で出発を待つ機体や、離着陸を金網越しに見守る女性、咲き誇る桜と青空にくっきり残る飛行機雲など、四季折々の風景を織り交ぜて写実的に描く。
「冬の着陸」は昨年の山形県総合美術展の奨励賞を受賞。雪が積もった山形空港に飛行機が降り立つ様子を描いた。
「奇跡」は東日本大震災が題材。
津波の痕跡が残る仙台空港から1機が飛び立つ姿に、復興への願いを込めた。
「大好きな飛行機のそばで自分の作品を飾ることができて気持ちいい。
鑑賞した人に『上手だね』と褒めてもらえたらうれしい」と笑顔を見せる。
舟越さんは生まれつき耳が聞こえない。
家業の石材店の4代目として働く傍ら、20歳で本格的に絵画を始めた。
毎秋の公募展「一水会展」で17回入選など多くの実績がある。
飛行機を題材にした作品は13年ほど前から新たに取り入れた。
舟越さんにとって飛行機はかけがえのない存在。
「健常者とコミュニケーションが取りづらく、ずっと寂しい思いがあった。飛行機が自由に空を飛ぶ姿を描いてストレスをぶつけている」と明かす。
国内外の空港に出向いて作品を描くのが夢という。
個展に合わせて愛知県から駆け付け、手話通訳を買って出た長女の加藤裕子さん(43)は「頑張る父の姿が、障害があって悩んでいる人を励ますメッセージになればいい」と願う。
20日まで。午前10時~午後5時(最終日は午後3時まで)。
入場無料。
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