厚生労働省の調査によると、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症を発症し、その数は約730万人に及ぶと推計されているようです。
精神科医で認知症サポート医としても活躍している岩瀬利郎先生は「認知症の発症を高める悪い習慣がある」と指摘しています。
たとえば岩瀬先生いわく「難聴も発症のリスクを高める」そうで――。
難聴は認知症発症のリスクを高める
近年、携帯型音楽プレイヤーやスマートフォンの普及により、イヤホンやヘッドホンで音楽などを聴く人が増えましたが、大きな音量で音楽などを聞き続けると、難聴が起こりやすくなります。
音を伝える役割をしている内耳の有毛細胞が徐々に壊れて、脳に伝える音の情報が少なくなり、聞こえが悪くなるのです。
そして、近年の研究で、「難聴は認知症を引き起こす危険因子である」ということがわかってきました。
軽度の難聴者の認知症発症リスクは、難聴でない人の2倍、中等度では3倍、重度難聴では約5倍になるといわれています。
耳と脳は密接な関係にある
人間は誰かと話をしているときは、耳から入ってきた音声を脳で言葉として処理し、相手と会話をします。
音楽を聞くときは、耳でとらえた空気の振動をメロディとして脳で認識します。
認知機能において、耳と脳は密接な関係にあるのです。
しかし、難聴になると、周囲からの音の情報が減るため、脳の活動そのものが低下します。
その結果、認知機能に影響を与えると考えられています。
大きな音にさらされることで起こる難聴は、少しずつ進行していくために初期には自覚しにくいのが特徴です。
重症化すると聴力の回復はむずかしいため、普段の生活からイヤホン・ヘッドホンの使い方に気をつけましょう。
補聴器を使わないと会話が減る
年を重ね、まわりの音が聞こえにくくなったなと感じたら、なるべく早く補聴器をつけましょう。
聞こえにくいままだと、他者とのコミュニケーションがとりにくいと感じるようになり、会話がうまくできず、喜怒哀楽の感情の反応が起きにくくなります。
また、うまく会話ができないことから人と会うのが億劫になって出歩かなくなり、だんだんと社会的に孤立してしまうかもしれません。
家にいる時間が増えると、脳が新しい刺激を受ける機会が減るので、認知機能が落ちていき、認知症につながる可能性があります。
シンガポール国立大学を中心とした研究では、補聴器を使用している人は、補聴器を使用していない難聴の人に比べて認知機能の低下が19%ゆるやかになることがわかっています。
補聴器の使用はなるべく早いほうがいい
老化による難聴には、残念ながら決定的な治療法はありませんが、難聴を放置しておくのはリスクになります。
家族との会話のなかで「え?」と何度も聞き返すなど、コミュニケーションに支障を感じたら、補聴器をなるべく早くつけ、認知機能の低下を防ぎましょう。
また、補聴器に慣れるには時間がかかります。
その人の聴力や生活に合ったちょうどいいレベルに調整するのも、補聴器に入ってきた音から言葉を聞きとれるようになるまでにも時間がかかるので、なるべく早めに使い始めることをおすすめします。
補聴器を購入する際には、本人にあった補聴器を見つけるために、専門的な設備や知識・技術をもった耳鼻咽喉科医(補聴器相談医)や認定補聴器専門店に相談しましょう。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、ホームページ上で都道府県別の補聴器相談医の名簿を公開しているので、それを参考にしてみるのもよいかもしれません。
※本稿は、『認知症になる48の悪い習慣 - ぼけずに楽しく長生きする方法 -』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。
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