樋口恵子 補聴器で医療控除が受けられず「老い」にはお金がかかると実感。心配してもしょうがない、老いが来たら「来た!」と思うしかない

樋口恵子 補聴器で医療控除が受けられず「老い」にはお金がかかると実感。心配してもしょうがない、老いが来たら「来た!」と思うしかない

平均寿命が伸びる一方で、長生きによる「老い」に直面する場面も増えています。

以前と違う自分に戸惑ったり、忘れてしまうことに恐怖を感じている方もいらっしゃることでしょう。

91歳になった今でも執筆活動を続けている、評論家・東京家政大学名誉教授の樋口恵子さんは<老いのトップランナー>として、「自分の老いを実況中継しながら、皆さんにお伝えしてご一緒に考えていきたい」と話します。

その樋口さん、「老いはいつ、どういう形でやってくるかわかりません」と言っていて――。

そのときが来たら「来た!」と思うしかない
老いはいつ、どういう形でやってくるかわかりません。

心配してもしょうがないから、そのときが来たら「来た!」と思うしかないのです。

私はあまり嘆かずに、何とか自分を使いこなそうと思っています。

私も少しだけ耳が遠くなり、補聴器のお世話になっていますが、娘からは補聴器の使い方が下手だと言われて、毎日のようにけんかをしております。

耳鼻科では「重症ではないですね」と言われたのですが、高齢社会をよくする女性の会*1の小田原大会に向けて、相手の話が聞こえないと困るからと思って、自ら補聴器を作ったのです。

これが高いのよ。

落としたら大変です。

安いものだと雑音が入ってしまうらしいけれど、私が買ったのはそこそこいいものでしたから、すごくクリアに聞こえます。

*1 高齢社会をよくする女性の会:樋口さんが理事長を務めるNPO法人。1983年設立、2005年にNPO法人化。

快適さを求めれば高額に
私は読売新聞のコラム「人生案内」の回答者を長年務めていますが、「おばあちゃんに『補聴器をつけて』と頼みたいけれど、頑としてつけてくれません」という相談も寄せられました。

高齢者のいる家族内では、聴力にまつわるコミュニケーションがいちばん早くダメになるようです。

一般に視力よりも早くダメになるのが聴力なのです。

どうやら安い補聴器では雑音が入ってしまうようです。

それが不快で、二度と補聴器をつけなくなってしまい、家族が困っちゃう……。

もう少しお金を出せば雑音を抑えてくれるし、もっといいものなら自分の聴力の範囲に合わせて、相手の発する子音が聞こえにくくなるように調節もしてくれるとか。

結局、快適さを求めれば高額になるのです。

老いにはお金がかかります
ことほどさように、老いにはお金がかかります。

補聴器も眼鏡も保険適用外なので自費です。

私は補聴器代の医療費控除*2を受けようとしたら認められませんでした。

どうやら認定補聴器専門店で、最初から控除を受けられるやり方をして購入しなければいけなかったよう。

そんなことは知らず、面倒くさいからとデパートで作ってしまったので高くつきました。

多くの人はそういう仕組みを知らないと思います。

私も税理士さんに言われて初めて知ったのですから。

そういう手続きをして、しかるべきところで作れば医療費控除を受けられたのだと思いますが、時すでに遅しです。

*2 医療費控除:自分や家族のために、1年間に払った医療費が基準額を超えるとき、受けられる所得控除。補聴器の購入前に、補聴器相談医に診察してもらい、補聴器が必要と判断され、認定補聴器専門店で購入した場合、一定の医療費控除を受けることができる。

幸いにも目はいいのです
先日は1万円弱で杖を買いましたけれど、杖代の医療費控除も受けられないそうです。

杖があれば通院ができるなど、治療に必要なものなら認められるかもしれませんが、私の場合はダメ。

ただ仕事で外に出ることが多いので、税理士さんが必要経費として申告してくださいました。

幸いにも目はいいのです。

2~3年前に初めて眼鏡を作りました。

ちょっと乱視があるものだから、ひとりでフラフラ出歩いているとき駅のホームで行き先の表示が見えにくくなったのです。

寝転んで新聞や本を読んだりするくらいなら、眼鏡は一切いりません。

あれやこれや、本当に、老いるとはお金がかかるものですね。

※本稿は、『老いの地平線 91歳 自信をもってボケてます』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。

『老いの地平線 91歳 自信をもってボケてます』(著:樋口恵子/主婦の友社)
老いのトップランナー・91歳の評論家 樋口恵子さん。

脳科学者・瀧靖之教授(東北大学加齢医学研究所)から「樋口さんの生活・習慣は、脳によいことばかりです!」と絶賛された暮らしとは?

ボケるのが怖い人、老後の暮らしを心配している人、まだまだ夢をもって超高齢期を迎えたい人、親や祖父母世代が認知症になったらどうしようと悩む若い人、どんな世代にでも、男女差なく読んでいただきたい本です。

リンク先は婦人公論.jpというサイトの記事になります。
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