40代から増える「耳鳴り・難聴」に要注意! 〈第5回〉
耳鳴りや難聴などの耳の不調は自律神経の乱れが大きく関係しています。自律神経を整えるためには、不調なのが耳であっても、全身のエクササイズが役に立ちます。その方法を耳鼻咽喉科医で医学博士の石井正則先生に伺いました。
筋膜を緩める全身運動で耳をレスキュー!
40歳を過ぎた頃から、耳鳴りや聞こえにくいといった耳の不調を自覚する人が増えてきます。
「年齢を重ねるごとに、白髪が増えたり老眼が進んだり、といった老化現象が起こるように、耳も少しずつ機能が低下していきます。しかしそれにはとても個人差があります。
耳の不調に大きくかかわっているのがストレスです。過度なストレスが続いて自律神経が乱れると、耳の不調を加速させることがあります。
耳の健康を守るためには、日頃から自律神経のバランスを整えることが重要なのです。それには全身運動が有効です。特にウォーキングやヨガ、太極拳といった、人と競争しないマイペースで行えるものがおすすめです」(石井正則先生)
※耳の機能については第1回参照。
※ストレスについては第3回参照。
第4回では、自律神経を整えるツボが集まっている「耳をねじって引っ張る」メソッドを紹介しました。この回では簡単に行える全身体操である、石井先生が考案した筋膜プリプリ体操(略して筋プリ体操/GAKKEN)の中のおじぎねじり体操を紹介します。
「おじぎねじり体操は全身の筋膜を効率よく緩める方法です。
筋膜はタンパク質の繊維でできた伸縮性のある薄い膜で、筋肉をはじめ、骨、関節、内臓、血管、神経などを包み込み、全身に網の目のように張り巡らされています。この筋膜も加齢や運動不足、緊張、ケガなどで過緊張が起こるなどして、変質したり変形してしまいます。すると体や内臓の働きが悪くなり、痛みや不調の原因になります。
筋膜を意識的に緩めることで、全身の筋肉や臓器の働きがよくなり、自律神経のバランスが整っていきます」
【おじぎねじり体操】
この体操は文字通り、体をねじってゆっくりおじぎをするものです。体をねじることで、筋膜が効率よく伸ばされ、そのあとに繊維が緩んで柔軟性がアップ。全身の動きがよくなり、結果、自律神経が整っていきます。
1 左右の脚を揃えて立ち、背すじを伸ばして、下腹に力を入れておへそを内側に引き込みます。両腕は自然に体の横に置き、肩の力を抜きます。この状態で息を吸います。
3 上体を右に向けたまま、息を吐きながらゆっくり前に倒し(前屈)、両腕は自然に下に垂らします。この状態を20秒キープして、ゆっくり元に戻します。
続いて、左脚を前から右にクロスさせ、上体を左に向けてからゆっくり前に倒します。20秒キープして、ゆっくり元に戻します。20秒キープするのが難しかったら、10秒×2回でもOK。左右交互に行います。
【ポイント】
イメージはぞうきん絞りです。ぞうきんを絞るときは、両端を持って反対にねじって絞ります。このとき、きつく絞ると水は全部出てしまいますが、ゆっくり軽く絞ると、ぞうきん全体が水分をたっぷり含んだ状態になります。
「この体操を行うと、体内でこの『軽いぞうきん絞り』と同じことが起こります。起点を決めて体をゆっくりねじることで、周囲の毛細血管からリンパ液がにじみ出て、筋膜の繊維の間を満たします。これにより筋膜の網の目が潤って柔軟性を取り戻すのです」
ポイントは筋膜が潤っていくことをイメージしながら、ゆっくり行うこと。そうすると筋膜がしっかり伸びてくれます。
また、脱水の状態は全体的に筋膜の動きにブレーキをかけます。この筋プリ体操の前にはコップ1杯の水か白湯を飲むようにしてください。
そして、動くときに息を吐くこと。右からねじることで腸を適度に刺激でき、頭、肩、お腹というように体の上からねじっていくと、自律神経を整える効果が高まります。
[教えていただいた方】
石井正則さん
耳鼻咽喉科医・医学博士
公式サイトを見る
JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長。東京慈恵会医科大学大学院卒業とともに、米国ヒューストン・ベイラー医科大学耳鼻咽喉科へ留学。帰国後、東京慈恵会医科大学附属病院耳鼻咽喉科医長、同大学准教授を経て現職。岐阜大学臨床教授を併任。専門は耳鳴り、めまい、難聴、宇宙酔い。日本耳鼻咽喉科学会代議員、宇宙航空研究開発機構(JAXA)・宇宙医学審査会委員。ヨギー・インスティテュート認定インストラクターであり、ヨガのポーズと呼吸の応用で、耳鳴りやめまいの軽減法を提唱している。著書に『70歳から難聴・耳鳴り・認知症を防ぐ対処法』(さくら舎)など多数。
イラスト/かくたりかこ 取材・文/山村浩子
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