『音』がなくても『表現力』で笑いを届ける 熊本聾学校手話落語部の青春【熊本】
去年9月に開催された『全国高校生手話パフォーマンス甲子園』で、熊本聾(ろう)学校の手話落語部が優勝を果たしました。音がなくても表現力で笑いを届ける、部員たちの活動をお伝えします。
【茶屋道 麻琳さん】(声/犬塚 智大 先生)
「私の名前は茶屋道麻琳といいます。熊本聾学校の手話落語部部長をしています」
熊本市東区にある県立熊本聾学校。この学校の手話落語部がある快挙を成し遂げました。去年9月に鳥取県で開催された『全国高校生手話パフォーマンス甲子園』。予選を勝ち抜き、全国各地から集まった14チームが手話の表現力を競ったこの大会で、見事、優勝を果たしました。
その原動力の一人が、部長を務める鹿児島県出身の茶屋道麻琳(ちゃやみち・まりん)さんです。家族全員、耳が聞こえない『デフファミリー』に生まれました。
なぜ、熊本聾学校を志したのでしょうか。
【茶屋道 麻琳さん】(声/犬塚智大先生)
「中学生の時、鹿児島の聾学校に通っていました。その時、熊本聾学校の先輩たちの手話パフォーマンス甲子園をユーチューブで見て興味を持って、その演技の表情、上手さ、そういったものに関心を持って手話落語部に入ってみたいと思いました」
茶屋道さんの進路にも影響を与えた手話落語部。この日は高等部の3年生の『引退寄席』に向けて、部員たちが練習に励んでいました。手話で落語や大喜利に取り組む部員。体を大きく使った表現で笑いを取りに行く部員。それぞれが工夫を凝らして、ネタを準備します。
迎えた本番。部員たちが表現したものを観客に予想してもらうという一風変わった『大喜利』や、舞台を大きく動き回る『ショートコント』など、部員たちは様々な表現で笑いを取ります。
そして、いよいよ落語。茶屋道さんは『千両みかん』という一席を披露します。
真夏に『みかんを食べたい』と気を病んだ大家(たいけ)の若旦那のため、みかんを探すよう大旦那に命じられた番頭。奇跡的に見つかったみかん、大旦那は『息子の病が治るなら』と千両で購入してしまう。見つけてきたお礼に、みかんをおすそわけしてもらった番頭は、自分の退職金よりも手元のみかんの方が高いと錯覚し・・・。
この日で引退となった3年生2人も最上級生の貫録あふれる堂々とした演目で会場に笑いを届けました。
【観客】
「表情も手話も豊富でとても面白かった」
「面白い表情や色々な手話の豊かな表現を見られてとても楽しかった」
笑いで包まれたこの日の寄席。部員たちも満足いくパフォーマンスができたようです。
【3年生 安田 裕二さん】
「自分の小噺は面白いか自信がなかったが、お客の反応を見たら笑ってくれていたので、うれしかった」
【3年生 西橋 一彦さん】
「全力で今まで練習してきた表情や手話などを堂々と発表してお客さまが笑ってくれてとても良かったと思った」
来年度は唯一の最上級生となる茶屋道さん。ある目標があるようです。
【茶屋道 麻琳さん】(声/犬塚智大先生)
「去年は優勝できたが、その先、熊本だけではなくて色々な地域、私の出身地の鹿児島などで行事に参加して、いろいろな活動をもっと広げていきたいと思っている」
『音』はなくても、表情で、表現力で、人を笑顔にできる。熊本聾学校の手話落語部は、これからも多くの人たちに笑いを届けます。
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