テレビ電話使い利用範囲拡大
県内どこでもテレビ電話で手話通訳が受けられる「遠隔手話通訳サービス」がある。もともと病院受診限定で始まったサービスだが、利用範囲が徐々に拡大。昨年11月からは買い物や旅行など幅広い場面で利用できるようになった。(西村理紗)
事前登録した聴覚障害者なら無料で利用できる。聴覚障害者が対面の健聴者とコミュニケーションを取りたい場合、まずスマートフォンやタブレット端末、パソコンでテレビ電話サービス「スカイプ」に接続する。手話通訳の担当者を呼び出して、聴覚障害者の手話を音声に、健聴者の音声を手話にそれぞれ変換して、対話する。
手話の普及などに関する施策を進める「県手話言語条例」が2018年に施行されたことや、聴覚障害者の緊急入院時などに備えられるよう、県が当事者団体などの要望を受けて19年に病院限定で運用を始めた。コロナ禍で厚生センターも対象に含め、昨年11月には利用場面の制限を撤廃した。病院での医師とのやりとりのほか、保険の手続きや観光ガイドの通訳、買い物などさまざまな場面で活用できる。利用エリアが県内なら、県外から来た人も利用できる。
病院での利用を中心に、全国でも導入が進んでいる制度だが、県内での利用者はまだいない。制度自体が広く知られていないほか、筆談や、間に通訳を挟んで通話する「電話リレーサービス」など、耳が聞こえない人と聞こえる人の間でコミュニケーションを取る方法がいろいろあるためだ。
ただ、県障害福祉課の専任手話通訳者、塩見七恵さんは「リレーサービスは自分と離れた場所にいる人と電話する時に使うが、遠隔手話通訳は筆談のように同じ場所にいる人とやりとりする。筆談だと字を書くので情報量が少ないやりとりになってしまう」と違いを強調する。「遠隔手話通訳では、手話という聞こえない人が普段使っている言語を使ったやりとり。言いたいこと全てが伝えられる、聞いたこと全てが自分に入ってくる」と利点を語る。
県聴覚障害者協会の菊池友達さんは「スムーズに聞こえる人との会話ができる。サービスのイメージが分かりにくいとの声も聞くが、遠隔手話通訳が徐々に広まっていけばいい」と今後の普及に期待した。
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遠隔手話通訳は県が県聴覚障害者協会の協力で行っている。利用する際は前日までに協会への事前申請が必要。対応可能時間は平日午前8時半~午後5時。県中央病院、富山市民病院、済生会高岡病院、厚生農業協同組合連合会滑川病院、南砺中央病院にはタブレット端末が置いてあり、窓口で申し出れば利用できる。協会がタブレット端末の貸し出しもしている。(問)県聴覚障害者協会FAX076(441)7305、メールhaken@tomichokyo.or.jp
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