山口県下松市は耳の聞こえに不安がある人に市役所の窓口で使ってもらおうと、このほど「軟骨伝導イヤホン」を導入した。昨年12月の市議会定例会の一般質問で柳瀬秀明議員(公明党)が市に導入を提案して、約1カ月半で実現した。県内の自治体では長門市役所に次いで2例目になる。
(山上達也)
集音拡声器では「周囲に話が漏れる」
軟骨伝導イヤホンは耳の穴を取り巻く軟骨組織に振動を与えることで鼓膜を振わせ、音を感じさせる仕組み。補聴器のように耳せんタイプのレシーバーを耳の穴に深く差し込む必要がない上に、球形のイヤホン部分を耳たぶに掛けるだけでいいので耳穴をふさがず、雑音も少ない。
昨年夏に大阪市のティ・アール・エイ㈱が開発し、価格は約3万円。東京の城南信用金庫など民間事業所を中心に来訪者への対応用に導入が進んでいる。片耳で10万円から20万円と言われる補聴器より格段に安い。
これまで下松市では窓口に「耳マーク」を掲示し、聞こえに不安がある人には筆談や集音拡声器で対応してきた。しかし筆談では手間がかかることでスムーズな意思疎通が難しく、集音拡声器では個人情報などのデリケートな内容が周囲に漏れ聞こえることが課題になっていた。
「違和感なく、よく聞こえる」
そこで市は柳瀬議員の提案を参考に軟骨伝導イヤホンを導入した。両耳に球形のイヤホンをかけ、コードでつながれた本体はわずか30グラムの長方形で、コードの一部が集音するマイク部分になっている。
実際に使ってみた市健康福祉部の瀬尾悟史障害福祉課長は「違和感がなく、よく聞こえる」と感想を話し、森藤晶子障害福祉係長も「マイク部分がご本人の声も拾うので、耳が遠い人でも大きな声を出す必要がなくなる」と効果を期待。記者も実際に使ってみたが、イヤホンをしている実感がない上、音質も極めて安定していた。
市は新年度にもう1台導入し、2台体制で市民が気軽に相談できる対応を心がける。柳瀬議員は「市役所の窓口で周囲に声が聞こえないような対応ができないかと、支持者から相談を受けていた。議会での要請から1カ月半で迅速に導入してもらった対応に感謝したい」と話していた。
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