「同じ障がいがある子供に元気を」聴覚障がいがある女子高校生 「ボウリング」で目指すデフリンピック
聴覚障がいのあるアスリートのための国際大会「デフリンピック」が来年、東京で開催されます。仙台市在住の女子高校生は同じ障がいのある子供たちに勇気を届けたいとボウリングで金メダル獲得を目指します。
仙台市出身の高校生・佐藤杏奈さん(18)です。生まれつき聴覚に重度の障がいがあり、6歳と13歳のとき2度にわたり、耳の奥に「人工内耳」と呼ばれる、音の振動を電気信号にかえて伝える装置を付ける手術を受けました。
佐藤杏奈さん(18)
「人工内耳がないと全く聞こえない。横にジェット機が飛んでいても気づかないぐらい」
中学1年生から本格的にボウリングを始めた佐藤さん。人工内耳をつけて健常者の大会に出場し、高校1年生のとき、東北総合体育大会で個人4位となり、翌年は2位となるなど実力を伸ばしてきました。
佐藤さんが今、目指しているのは、聴覚障がい者による国際大会、デフリンピック。「デフボウリング」は、ボウリングと基本的なルールは変わりませんが、競技中は人工内耳や補聴器を外す必要があります。音でタイミングを計ることができなくなり、ボウリングとはまた違った難しさがあるといいます。
佐藤杏奈さん(18)
「人工内耳を外すと全く音の情報が無いので、慣れるまで時間がかかり大変だった」
競技中、佐藤さんを取り巻く世界は深い静寂に包まれます。佐藤さんはデフボウリングに専念するとおととしと去年、全国ろうあ者体育大会で連続優勝を果たします。
2月行われた県スポーツ合同表彰式では、2年連続で功績賞も受賞しました。
佐藤杏奈さん(18)
「この賞をもらえるのは当たり前じゃないと思うので、今年もまたもらえるように頑張りたい」
佐藤さんは両親と弟2人、祖父母と暮らしています。
母 恵美さん
「耳のことで他の子より、言葉の数も少なくて、皆に助けてもらった存在で、友達に引っ張られるようなタイプ」
父の昭仁さんは、ボウリングでフルスコアを出す腕前のアマチュアボーラー。今は指導者として娘を支えています。
佐藤杏奈さん(18)
「父は何でも言える関係のコーチと、プレイヤーみたいないい関係だと思う」
佐藤さんがボウリングを始めたきっかけは、小6のときにクリマスプレゼントとして両親にねだった、かわいいボールを見つけたことでした。
父 昭仁さん
「それまではボウリング場に行っても、マンガ読んでいたりゲームしていたり、ただついて来るだけって感じだったんですけど」
ボウリングを始め、デフボウリングに転向した佐藤さん。去年、ドイツで開催された世界選手権に、日本代表として出場したことが大きな転機になりました。親元から離れ、初めて参加した海外での大会。団体初となる銀メダルの獲得にも貢献しました。
母 恵美さん
「進路とかもドイツに行った後に、いろんなことを自分で組み立てて考えるようになった」
佐藤さんは、今年春から東北福祉大学に進学することを決めました。デフボウリングの世界大会を経験したことで、自分と同じような障がいがある人の支援ができないか、考えるようになったそうです。
佐藤杏奈さん(18)
「東北福祉大に進学します。聴覚支援学校の先生を目指してみようかなって、特別支援も学べるし、先生も目指せるから福祉大にしようって」
佐藤杏奈さん(18)
「きょうはアベレージ200を取れるよう、練習がんばります」
ボウリングを通じて出会った仲間と練習をします。佐藤さん以外は健常者。年齢もばらばらです。
一緒に練習する 中田弥宏さん(16)
「佐藤さんは常に笑顔で、人々を楽しませるようなボウリングしている」
一緒に練習する 中村開さん(14)
「(佐藤さんは投げ方もきれいなフォームをしているので参考になる」
佐藤杏奈さん(18)
「いろいろな障がいのある子供たちに、私が活躍している姿を見せて、障がいがあるからできないというわけでなく、がんばればできるんだよと教えたい」
春には大学生となる佐藤さん。夢の実現に向けてまい進を誓います。
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