聞こえの基礎知識【シニア編】補聴機器は使っていない方
普段の生活の中で相手の声が聞き取れず会話に困ることはありませんか?
このページは、普段の生活の中で会話に困っている方向けのページです。
「昔の様にお友達と会話を楽しみたい」、「何度も聞き返すのがいやで分かったふりをしてしまう」、「話相手が何を言っているのか分かりづらく会話がおっくう」といった方々が、少しでも楽しく充実した日々の生活を送れるよう、さまざまな情報をお届けしています。
少しお時間をいただきこのページを読んでいただくことで、みなさんが持っている疑問や不安を解消できたらとても嬉しいです。
言語再獲得の重要性
相手の話が聞こえなかったり、聞き取りにくかったりする理由には、加齢による聴力の衰えもありますが、脳の機能が関係していることもあります。
話し相手と会話をするとき、相手が話している「言葉を理解」し、自分の考えてることを「言葉を用いて伝える」必要があります。
その際に使用する能力を「言語能力」といいますが、この「言語能力」は加齢により衰えることがあります。
「言語能力」は「認知機能」の一つで、高齢になるにつれて徐々に衰えてきます。
相手が言っていることを理解するのに時間がかかったり、話の内容がなかなかつかめなかったりすることはないでしょうか。
言葉を理解できない、文字が書けないといった「失語」という状態になることもあります。
「言語能力」の衰えは、訓練により「言語を再獲得」することで補うことができます。
認知機能の5つの力
①記憶力・・・ものごとを覚えておくために必要な力
②言語能力・・・相手が話している言葉を理解する、言葉を用いて意志を伝えるときに使う力
③判断力・・・自分の状況を把握する「見当識」や、ひとつのことに集中する「注意力」など
④計算力・・・数字を理解し計算する力
⑤遂行力・・・何かを成し遂げるために使う力
認知機能低下の主な症状
①記憶障害・・・いわゆる「物忘れ」
②失語・・・ものの名前が出にくくなる、などの症状が出る
③失行・・・日常生活で普通に行っている行動ができなくなる
④失認・・・感覚機能に異常がないのに、物体を認識できなくなる
⑤遂行機能障害・・・計画を立てて物事を行うことができなくなる
難聴との関係
聴力が衰えると、聞き取った音が聞こえていたころの音と異なる音に聞こえるため、脳が音を認識しにくくなります。
そこで、補聴器を使って聞こえを補うことで、聞こえていたころの音に近づき、脳が音を認識しやすくなります。
ただ、長い年月をかけて徐々に聞こえにくくなった場合は、脳も聞こえていたころの音を思い出すことが難しくなるため、脳の「言語能力」を訓練し、あらためて音を脳に覚えさせること(言語再獲得)が必要になります。
補聴器を使用して言語再獲得をする際にとても大切なことがあります。
補聴器は補聴器の機能・性能や値段にかかわらず、使用する人の聴力を正確に測定し、その人の聴力に合わせて適正に調整をする必要があります。
また、上記の通り、補聴器の使い始めは、脳が聞こえていたころの音を忘れてしまっているので、補聴器を使用する時間を初めのうちは短く、日を追うごとに徐々に長くしていく必要があります。
補聴器について
補聴器は読んで字のごとく、「聴こえを補う器械」です。
「音を大きくするだけのもの」とか、「お年寄りが使うもの」といったイメージがあり具体的にどういった効果が得られるのかは意外と知られていないかもしれません。
補聴器は聴こえを補ってくれますが、聞こえを治療してくれるものではありません。
お一人お一人のお耳の状態や生活の環境にあった器械を選んだうえで、器械の持つ力を最大限使いこなせるようにすることが肝心です。
そのためにはどんな機能が自分に必要で、どうやったら器械の力を最大限活かせるかを知ることが大切です。
ご自身で補聴器を使おうと思ったり、使ってみたほうが良いのかなと思ったりした時に、または、ご家族が最近聞こえにくい様子だなと思われる方にも是非ご参考になればと思います。
医療費控除について
補聴器を購入することは決して安い買い物ではありませんよね。
平成30年度から補聴器購入に際し、医療費控除を受けられるようになりました。
<一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 HPより>
補聴器の装用と活用は、WHOのキャンペーンに「難聴」が取り上げられ、さらには難聴と認知症の関係のエビデンスが蓄積されつつある現在、日耳鼻として推進すべき社会貢献の中でも喫緊の課題の一つです。
超高齢社会を迎え、身体障がい者に限らず広く補聴器を活用することは重要でありますが、補聴器は高額な医療機器であり、装用者、購入者にとって大きな負担となっています。
平成30年度から、「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」の活用により、医療費控除を受けられることが、厚生労働省、財務省によって承認されました。
<聞こえのコラム> 補聴器以外に集音器と呼ばれる機械があります。 |
補足情報
よくある質問
補聴器とはどの様なものですか?
補聴器は聴力が低下した人の聞こえを補う医療機器で、聞き取りにくい音を、補聴器を使用する人の聴力に合わせて、聞こえやすい音に調整してくれます。
構造的には①音を拾うマイクロホン、②音を大きくするアンプ、③音を出すレシーバーの3つの部品からなります。
補聴器を使えば以前の様に聞こえるようになりますか?
補聴器は聴力が衰える前の聞こえに戻すのではなく、現在の聴力を最大限に活用し、聞き取りにくい音を、その人の聴力に合わせて聞こえやすい音を提供するものです。
一度低下してしまった聴力を元通りにすることはできませんが、正しく調整された補聴器を活用することで、聞こえを補い、生活の質を高める助けになります。
<参考>
『知っておきたい聞こえの豆知識』
・補聴器を使うとどのくらい聞こえるようになる?
・補聴器をつけている効果は客観的にわかるもの?
補聴器はどのくらい聞こえにくくなったら使いはじめるべきですか?
聞こえに不自由を感じられたら、なるべく早い時期に耳鼻科を受診し、補聴器の使用について相談することをおすすめします。
音が聞き取りづらい状態が長く続くと、脳が音を忘れてしまい言葉を聞き分ける力が低下してくると言われています。
早い時期から補聴器を使い始めて、音を忘れてしまうことを未然に防ぐことが大切です。
補聴器を使って耳が悪くなることはありませんか?
補聴器には耳を悪くしてしまうような必要以上に大きい音が出ないような仕組みが作られているので安心してください。むしろ居酒屋さんなどの騒がしい環境では、難聴を持っていない人でも補聴器をつけた方が騒音を抑えてくれて快適だったりするくらい性能が上がっています。
補聴器の購入を検討しているのですが、どこで購入したらよいかわかりません。
補聴器はさまざまなお店で販売されていますよね。電気店や眼鏡店、補聴器の専門店ももちろんあります。
お店を選ぶ際におすすめしたいポイントがいくつかあります。
まずは補聴器の専門家としての資格「認定補聴器技能者」を持っている販売員が在籍しているかどうか。
認定補聴器技能者またはこの資格を取得するために勉強をされている方であれば、補聴器のこと、耳の仕組みの基本的なこと、を理解されているので、気になる点があれば、質問にしっかりお答えいただけると思います。
次に、お店の方からの押し付けがないかどうか。
補聴器を使う/使わない、そして、どの補聴器が自分に合うかどうかを最終的に決定されるのは、お使いになる方ご自身です。
補聴器をお使いになられる方がご自身の聞こえのパートナーとして、補聴器のもつ力を 100%活用できるようにサポートするのが補聴器専門家の役割なので、補聴器にどんなものがあるか納得いくまで説明してくれる、たくさんある補聴器メーカー毎の特徴をしっかり把握している、といった点を確認されることをお勧めします。
聞こえ=聴覚は五感の一つなので、人によって音の好みがあります。
生活環境や聞こえの状態に対して、すべての補聴器がすべての方に対して 100 点満点の器械ということはないですので、ご自身の生活環境や聞こえの状態を鑑みた上で、選択肢を提案してくれるお店であれば信頼できるのではないかと思います。
<参考>
『知っておきたい聞こえの豆知識』
補聴器はどこで買えばいいのか?
補聴器の価格はいくら位?
一般的に補聴器の価格は機能・性能が増えるほど高くなり、各機種ごとに3~5つのクラスに別れています。
価格は10万円弱~50万超くらいとなっています。
補聴器の値段の差は、補聴器にできることの差=補聴器にどこまでの機能を求めるかで異なります。
<参考>
『知っておきたい聞こえの豆知識』
・補聴器の値段の違いは何?
・補聴器購入時に公的な援助や補助金、保険などはありますか?
補聴器の寿命は何年ですか?
補聴器の耐用年数は5年間とされていますが、日々のお手入れと、お店での定期的な点検をすることで長く使うことができます。
※「補装具費 事務支給ガイドブック」聴覚障害者の補装具では補聴器の耐用年数は5年とされています。
ロジャーの申請が通りません。どう説得すればよいでしょうか?
お使いの補聴器が重度用耳かけ型補聴器で受信機、オーディオシュー、ワイヤレスマイクを必要とする場合、補聴器と同じように「補装具申請」が可能です。
お使いの補聴器が重度用耳かけ型補聴器以外の場合は、「特例補装具申請」という申請を行います。
補装具でも特例補装具でも『真に必要な理由』が必要とされているので次のような理由を強く訴える必要があります。
・仕事上必要(ロジャーがないと業務が制限される)
・自治会などで役員をしており、ロジャーがないと離れた位置にいる人の話を聞き取ることができない
成人の場合、「あった方がより助かる」程度の理由だと申請は通りませんので、本当に困っていることを強く訴えてください。
<参考>
『『知っておきたい聞こえの豆知識』』
・補聴援助システム『ロジャー』の福祉申請手順は?
『お役立ち資料』
・ロジャーの申請方法【社会人編】