著名人が「突発性難聴」を発症したというニュースを目にすることが近年増えました。左右どちらかの耳(まれに両耳)が突然聞こえにくくなる疾患です。幅広い年代に起こり、とくに働き盛りである40代~60代に多くみられますが、発症後すぐに治療しないと聴力を失う場合も。そこで、耳鼻咽喉科の鈴木香奈先生に、突発性難聴の症状や原因、治療法について詳しい話を伺いしました。
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突発性難聴になる原因とは
難聴と聞くと、加齢によるイメージが強いでしょう。しかし、突発性難聴は前触れなく、誰にでも起こり得る病気です。
耳の構造は大きく3つに分かれ、外耳、中耳、内耳です。正常に音が聞こえるには、外耳道を通った音が中耳にある鼓膜を振動させ、3つの小さな骨で音を増幅させて内耳に伝えます。
内耳には蝸牛(かぎゅう)という器官があり、その中には細い毛束のような有毛細胞と呼ばれる細胞が、片耳あたり約1万5000個並んでいます。内耳から届いた振動を、有毛細胞が電気信号に変換して聴神経に伝えることで音が聞こえるのです。
この有毛細胞がなんらかの原因で損傷することにより音を感じ取りにくくなった状態を、突発性難聴といいます。損傷の原因は不明とされていますが、主な原因はウイルス感染や血流障害だといわれています。
著名人が発症を発表したニュースなどから、過度なストレスによって突発性難聴が引き起こされるというイメージを持っている人は少なくないでしょう。ウイルス感染は、ストレスや過労、睡眠不足などから免疫が低下し起こりやすくなります。そのため、突発性難聴はストレスが原因で発症しやすい病気だといわれているのです。
また、血流障害による突発性難聴は、糖尿病が影響している場合も。血糖値が高い状態が続いていると血管が傷つき、内耳の細い血管にも障害が起こることがあるからです。
違和感を覚えたら早めの受診を
突発性難聴の症状は、片耳にだけ出る場合が多く、両耳が突然聞こえなくなることはほとんどありません。次のような症状を感じたら、なるべく早く病院を受診しましょう。
【突発性難聴の初期症状】
耳の聞こえが悪い
耳が詰まった感じがする(耳塞感)
音が二重に聞こえる
「キーン」や「ゴー」といった耳鳴り
めまいや吐き気
耳鳴りは高音だったり、低音だったり、人によってさまざまです。また、難聴には気づいておらず、めまいや吐き気の症状がきっかけで検査をしたら突発性難聴だったということも。
聴力の回復が期待できるのは、発症から1か月以内とされています。それ以上経っても症状の回復がみられない場合は、改善が困難になることが多いです。一方で、再発はほとんどみられません。
突発性難聴は、早期発見、早期治療が肝要です。耳の聞こえにくさを感じたら、安静を保ち、できるだけストレスを感じない生活を心がけ、できるだけ早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
(Hint-Pot編集部)
鈴木 香奈(すずき・かな)
金沢駅前ぐっすりクリニック院長。日本耳鼻咽喉科学会専門医。1996年、金沢医科大学卒業。睡眠時無呼吸症候群を核に一般耳鼻咽喉科診療を行う。
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