最大震度7を記録した能登半島地震で、被災地にさまざまな物資が届けられる中、車いすや大人用おむつ、補聴器用の電池といった障害者や高齢者の生活必需品に特化して寄付を募ったサイトがある。約2週間で被災地に送られた物資の数は8800点余り。一律の支援では救えない災害弱者に光を当てる新しい支援方法として注目を集めた。
サイトの名前は「届け.jp」(https://todoke.jp)。今回の地震で被害の大きかった石川県輪島市、志賀町、穴水町、能登町、珠洲(すず)市の5つのエリアに分け、現場から要望のあった物資のリストを掲載。支援者は具体的な品目を選び、通販サイト「アマゾン」などを通じて被災地に送る。
きっかけは、障害者支援などを行う一般社団法人「障害攻略課」の理事、澤田智洋さん(42)の元に届いた1通のメールだった。送信元は石川県で障害者らの旅行サポートなどを手掛ける「石川バリアフリーツアーセンター」のメンバー。被災地の障害者や高齢者が必要としている物資のリストが添付されていた。
同センターは当時、そのリストを関係各所に送り、支援を求めていた。澤田さんは「物資が過剰になったり、不必要なものも一緒に届いたりしてしまうかもしれない」と危惧した。東日本大震災など過去の災害でも、被災地のニーズとかみ合わない物資が大量に届き、荷さばきに人手が取られるなど、善意の支援がかえって被災地の負担になるケースがあったからだ。
そこで、今必要とされている物資をリアルタイムで確認でき、必要な量だけを届けられる仕組みをインターネット上で構築した。被災地のニーズは石川バリアフリーツアーセンターが随時更新し、リストには「床ずれ予防シート 20箱」「大人用紙おむつ 38ケース」など具体的な商品名と必要個数が並んだ。
メールが届いてから4日後の1月10日、サイトを開設したところ、X(旧ツイッター)などで取り組みが話題となり、瞬く間に支援が広がった。
「被災地のために何かしたいという気持ちに応えられたからか、予想を超えるスピードで支援が集まった」(澤田さん)
過去の反省を踏まえ、能登半島地震では発災直後から、個人がむやみに支援物資を送ったり、現地にボランティアに行ったりすることを控えるよう呼び掛けられた。募金については「何に使われるのか分からない」「せっかく募金しても、被災者まで届かないのではないか」といった懸念も広がった。そんな中、被災地のニーズや自分が何を支援したのかが明確な新しい形の寄付として、被災地に心を寄せる人の心をとらえたとみられ、開設から約2週間で、リストに掲載された物資はすべて被災地に送られた。
今後はあらかじめ支援可能な物資のリストを作り、被災地の人に選んでもらうような方法も検討し、取り組みを続けていく。澤田さんは「日本は災害大国。合計で4千万人を超える高齢者と障害者への支援は、今後も絶対に必要だ」。今回培ったノウハウを生かし、今後の大災害でも迅速に支援を開始できる体制作りにもつなげるつもりだ。(松田麻希)
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