核兵器廃絶に向けて高校生平和大使と高校生1万人署名の活動をしてきた3年生が卒業した。特別支援学校から初めて平和大使に選ばれた長崎県立ろう学校の塚根みづなさん(18)=長崎市=もその一人。手話で核廃絶を訴えてきた塚根さんは「足りないものがあるからこそ補ってくれる誰かがいる。悩むことがあっても大丈夫。希望を持って頑張ってほしい」との思いを後輩たちに託した。【樋口岳大】
塚根さんは小学6年で両耳の進行性難聴と診断された。補聴器を使えば音は聞こえるが、補聴器なしで耳の調子が悪いとバスのエンジン音すら聞こえないこともある。中学1年の夏休みに被爆体験を話してくれた祖父から「戦争をしても何も生まれない。国と国との争いになったら、その下で犠牲になるのは市民だ」との言葉を聞き、平和のために活動したいと思った。
県立ろう学校高等部に入学した2021年に第24代平和大使に選ばれた。新型コロナウイルスの感染拡大でスイス・ジュネーブの国連欧州本部への渡航ができないなど活動は制限された。それでも仲間たちと「自分たちができることを」と考え、核兵器禁止条約の意義を伝える動画を作成。そこで塚根さんは条約の内容を手話で説明した。その後、平和大使が参加する集会などで塚根さんは舞台の脇に立ち、手話通訳をするようになった。
24日に長崎市であった平和大使らの卒業を祝う集いで、塚根さんは「手話を通して発信した時、聞こえない方が『感動しました。頑張ってください』と言ってくれたのは私にとってとても大きかった。高校生活はこの活動なしには語れない」と振り返った。
卒業生たちは4月から大学や専門学校で学ぶ。塚根さんは聴覚や視覚に障害のある人のために設置された国立筑波技術大(茨城県つくば市)の産業技術学部総合デザイン学科に進学。「デザインを通して子供たちと交流し、平和について考えていきたい」と意気込む。
高校生平和大使派遣委員会共同代表の平野伸人さん(77)は「コロナ禍で活動ができず、やめようと思ったこともあったが、皆さんが歴史をつないでくれた。本当に人間愛のあふれる優しい人に育ってくれた」と門出を祝った。
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