耳の不自由な人たちによる「デフサッカー」の世界選手権大会(23日からマレーシアで開催)の女子日本代表に日本経済大(福岡県太宰府市)1年の久住呂文華(くじゅうろ・あやか)さん(18)が選ばれた。
デフサッカー女子日本代表のユニホームは、今大会からサッカー女子日本代表「なでしこジャパン」と同じデザインになり、久住呂さんは「小さい頃からの夢だったユニホームをまとうことができるのは本当にうれしい。
他の選手の思いも背負って世界の人にプレーを見せたい」と前を見据える。
久住呂さんは東京都江戸川区出身で、生まれた時から耳が聞こえず、1歳の頃から補聴器を付ける。
耳が聞こえない父と兄がプレーしていた影響を受けて3歳から地元のクラブに入り、健常者とサッカーをしてきた。
2011年になでしこジャパンがドイツ・ワールドカップ(W杯)で優勝したのをテレビ観戦したことから、本格的に打ち込むようになった。
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中学時代は同区の女子サッカークラブに所属し、成立学園高校(同北区)サッカー部だった高校2年時には都でベスト4になり関東大会に出場した。
今春、親元を離れて自立したいという思いと経営学を学ぶため同大に進学した。
デフサッカーの基本的なルールは健常者のサッカーと同様だ。プレー中は補聴器を外すことが義務付けられ、選手たちは音なきピッチで手話やアイコンタクトによってコミュニケーションを取る。
久住呂さんは健常者とプレーする時は補聴器を付けるが、指示の内容を聞き取き取るのは難しく、「聞こえない中で正確なプレーをするためには広い視野が求められる」と話す。
身長172センチの久住呂さんは守備の要のセンターバックを務め、フォワードへのロングパスなどで試合も組み立てる。
J1鹿島アントラーズの元選手で、同部の賀谷(がや)英司監督(54)は「プレーに安定感があり、止める蹴るという技術にたけている」と評価する。
サッカー女子日本代表への選出は、中学2年時のアジア大会(18年)と、22年のデフリンピックに続いて今回で3度目となった。
海外チームとの対戦では高身長や体格の良い選手が多く、日ごろから体幹トレーニングやヘディングの練習に力を入れる。
日本ろう者サッカー協会によると、国内のデフサッカーの競技人口は5人制のフットサルと合わせて約300~400人。
女子選手はそのうち約50~100人とされ、九州には女子のデフサッカーチームはない。
久住呂さんは今後、デフサッカーやデフフットサルを広めるための体験イベントも開きたいと考えている。
久住呂さんはデフフットサルの女子日本代表にも選出された経験をもつ。11月にはブラジルでデフフットサルW杯が開催予定で、25年夏に東京で国内初開催となるデフリンピックではサッカー競技もある。
久住呂さんは「一人でも多くの人から憧れられるような選手に少しでも近づけるよう、成長のチャンスだと思って結果も内容もこだわりたい」と闘志を燃やす。【栗栖由喜】
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