研究者たちは、マイクロプラスチック曝露がマウスの聴覚障害と平衡感覚の問題と関連していることを発見しました。この研究は「Journal of Hazardous Materials(危険物質ジャーナル)」に掲載されており、特にポリエチレン(PE)という一般的なプラスチックが健康リスクを引き起こす可能性について調査しています。
この研究は、ジャヴェリア・ザヒール氏とその同僚によって行われ、マウスの内耳機能に対するマイクロプラスチックのポリエチレンの影響を調べました。マウスは対照群とPE曝露群に分けられ、後者には4か月間、毎日100 ppm/100 μLのPEを経口投与しました。
研究者たちは、マイクロプラスチックが内耳に蓄積し、聴覚障害や平衡感覚障害などの機能障害を引き起こすかどうかを確認することを目指しました。
Graphical abstract. Credit: Zaheer, et al, https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0304389424017722
主な発見
- マイクロプラスチックの蓄積: 研究は、PE(ポリエチレン)が内耳の蝸牛および前庭領域に蓄積することを確認しました。特に蝸牛の基底回転部に最も高い濃度のPE粒子が見られましたが、これは血液供給源に近いことが原因と考えられます。
- 聴覚障害と平衡感覚の問題: PEに曝露されたマウスは聴覚閾値が大幅に上昇し、聴覚障害を示しました。また、これらのマウスはトレッドミルやロタロッドテストなどの運動協調性および平衡安定性を評価する行動テストで、平衡感覚の障害を示しました。
- 遺伝子発現の変化: トランスクリプトーム解析により、PE曝露が炎症やアポトーシスに関連する遺伝子(PER1、NR4A3、CEBPB)の上方制御を引き起こすことが明らかになりました。これらの遺伝子変化は、qRT-PCR、免疫蛍光染色、およびウェスタンブロッティングを通じて確認され、PE曝露が内耳の損傷を引き起こす分子経路を引き起こすことが示唆されました。
- グルコース代謝の低下: 18F-FDG PETスキャンを使用して、PE曝露マウスの聴覚皮質におけるグルコース代謝の低下が見つかり、これは聴覚障害の臨床的所見と一致しました。
この研究は、特に聴覚と平衡感覚に関連するマイクロプラスチック曝露の潜在的な健康リスクを強調しています。環境中のマイクロプラスチックの広範な存在とそれが人間の組織で検出されることを考慮すると、これらの発見はプラスチック汚染が人間の健康に及ぼす長期的な影響についての懸念を引き起こします。
研究者たちは、マイクロプラスチックが内耳機能障害を引き起こす特定のメカニズムを探るために、さらなる研究が必要であると提案しています。また、異なる種類やサイズのマイクロプラスチックが聴覚健康に与える影響を調査することが、包括的なリスク評価を行うために重要であるとしています。
引用
Zaheer, J., Lee, H. S., Kim, S., Jang, J., Kim, H., Choi, J., Park, M.-H., & Kim, J. S. (2024). Microplastic polyethylene induced inner ear dysfunction in murine model. Journal of Hazardous Materials, 476, 135193. https://doi.org/10.1016/j.jhazmat.2024.135193
出典: Journal of Hazardous Materials
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