ろう者の男性 オンラインで手話を学べるサービス開発に込めた思い…子ども用や講師と会話できるサービスも作りたい

ろう者の男性 オンラインで手話を学べるサービス開発に込めた思い…子ども用や講師と会話できるサービスも作りたい

手話学習サービスを開発したろう者のエンジニア…伊藤浩平さん(40)

日本手話をオンラインで学習できるサービス「サインアイオー」を開発しました。いつでも、どこでも、パソコンやスマートフォンの画面でろう者の講師陣の手の動きや姿勢、表情などを見ながら、「遊ぶような感覚で学んでほしい」と考えて、2019年から本格的に提供を開始しました。

無料会員も含め、約8000人が登録してくれています。親子で一緒に視聴する人や、手話通訳の勉強をする人のほか、ろう者が働いている企業が従業員向けに登録するケースもあります。英語版もあり、外国の方も使っています。

私は、生まれつき聞こえず、両親は聴者です。家族や同級生との会話は口の動きを読み取って発音する「口話」が中心でしたが、深い話ができなかったり、話の内容がわからないことがあったりしました。他者とのコミュニケーションに壁を感じ、中学校に登校できない時期がありました。

そんな時に、インターネットに出会いました。両親が買ってくれたパソコンを使い、独学で自分のホームページを作りました。チャット機能を使って色々な人と会話できるようになると、世界が広がり、喜びと新鮮さを感じました。

手話を覚えたのは、筑波大付属 聾ろう 学校(当時)の高等部に進学してからです。手話だと、情報がほぼ100%わかる感覚があり、世界が変わりました。この時は、私も周囲も、日本語の文法・語順に合わせた手話を使っていました。

日本語と異なる独自の文法体系を持つ日本手話に出会ったのは、27歳の頃です。ちょうど、エンジニアとして独立し、手話やろう・難聴者に関する情報発信などをする「しかくタイムズ」というサイト作りに取り組み始めた頃でした。日本手話という言語で会話している人たちの姿に、ろう者としての誇りを感じました。

私も、日本手話で話すと、表現の幅が広がって、これまでよりもスムーズに、即時に意思疎通ができた。「自分の本当の気持ちが話せる言語だ」と思いました。

私がコミュニケーションの喜びを感じることができたのは、インターネットと日本手話があったから。どちらも、私の人生に恩恵をもたらしてくれた、生きる上で必要不可欠なものです。

ろう・難聴児の親は9割が聴者とされ、日本手話に触れる機会がなかなかない人もいます。この私たちの言語を伝承していくためにも、「サインアイオー」をもっと充実させていきたい。今後は子ども用の教材や、オンラインで講師陣と会話ができるサービスも作っていきたいと考えています。(聞き手・田中文香)(2024年3月12日付の読売新聞朝刊に掲載された記事です)

いとう・こうへい 仙台市出身。筑波技術短大(当時)でプログラミングを学び、IT企業勤務を経て、2010年、ソフトウェア開発などを手がけるフリーランスのエンジニアに。一般社団法人「しかく」代表として、手話をはじめとするろう文化の発信にも取り組んでいる。妻もろう者で、CODA(コーダ=聞こえない親を持つ聞こえる子ども)の娘と息子を手話で育てている。

リンク先はYomiDr.というサイトの記事になります。
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